研究課題/領域番号 |
17K13362
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
森橋 なつみ 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部調査・国際連携室, 研究員 (20795281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国絵画 / 遺民 |
研究実績の概要 |
本研究では特に宋から元への交代期の遺民画の特性を検証するために、王朝交代期の絵画について調査研究を進めている。前年度は本研究の大きな焦点となる宋遺民の画家キョウ開の「駿馬図」を中心に考察を進めた。また並行して、宋遺民の絵画研究を相対化するために後世の作品、とりわけ清時代初期の遺民画家の作品を中心とした調査・研究を進めていたが、揚州八怪展(於 大阪市立美術館6~8月)を準備する中で、さらにやや時代の下る清時代中期の画家・羅聘の制作が本研究に有効であると着眼し、考察に加えた。 羅聘は揚州八怪の一人として知られ、幽霊など異界の存在をえがく「鬼趣図」で名をはせたが、その淵源にキョウ開の絵画の存在があることを画賛等で言及している。羅聘は、山水・人物・花卉(梅花)など幅広い画題を手掛ける作家であったが、興味深いのは主題によって画風を選択している点である。羅聘の画は古典学習の上に成り、参照した古画の特性をよく消化・摂取している。この点で「鬼趣図」に代表される羅聘の画はある程度、遡及してキョウ開の画を検討する材料になりえると考える。 なお本研究は現在、主な対象としている宋遺民(キョウ開、鄭思肖等)、明遺民(石濤、八大山人等)、そして羅聘の作例について作品調査を進め、資料を蓄積してきているが、本来の計画では実施を予定していた海外調査は大きく遅れている。昨今の状況を鑑みて、実地調査ができない部分を画像資料等で補うなど、研究課題遂行のための手法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
引き続く新型コロナウイルス感染症のための渡航制限により、本年も当初計画にあった海外調査等は実施することができなかった。国内で可能な手法への全面的な切り替えも検討したが、一時期、感染状況の改善から往来の回復の見込みもあったため、調整を図りながら経過を見守ったが、結局のところピークを繰り返し、しばらくは期待できないと判断した。また所属機関が変わり、研究環境に変化があったため、2021年度は関連作品のある大阪や東京の博物館に出向き、補足的な調査を行うにとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
本課題はすでに再延長を行っているものの、海外渡航はここ一年程度内での正常化は難しいとみえ、本来の計画で重視していた国外調査も実施できない場合を見定めて、手法の変更を考える必要性が高まってきた。幸い、近日はオンラインツールの利便性が向上し、現地に赴けない代わりに資料や情報を入手する手段が増えてきている。よって、すでに蓄積した研究資料を精査し、考察に必要な文献や作品画像などによって海外調査の不足を補うことがある程度可能であると思われるので、国内での資料収集と可能な範囲での補足調査を加え、本課題の成果をまとめる準備に入る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題遂行のために重要と考えてきた海外調査が実施できず、それにかかる旅費の支出がなかったため当該の金額を繰り越すこととなった。次年度については、状況を鑑みて研究手法を調整し、国内調査旅費、資料図書や画像購入費に充てたいと考えている。
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