「遺民画家」という特定の時代と環境に限定してあらわれる制作主体の研究は、体系化がしにくく、必ずしも積極的には行われてこなかったが、今回、宋末元初の2人の遺民画家に焦点をあて、比較作例を集めて相対化しながら考察をすることで、その特質が随分と明確になったように思われる。「遺民」という現象は東アジアの儒教的倫理観のなかで、国や時代を越えて共鳴を生むものであり、絵画史だけではなく社会史、文学史など人文学にひろく応用できるものである。本研究はきわめて学際的な主題であり、問題の共有化と多角的研究によって美術史研究発展の一助となることが期待される。
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