本研究では、フランスの現代美術作家ソフィ・カルについて、彼女の作品解釈と切り離せない展示空間に着目することで、その表現の独自性を考察した。初期から最新作までを扱った個展およびグループ展など、2017-2018年に行われた実際の展覧会を実見・調査しながら、作品とその展示構成について分析した。旧作品と身近な家族の死を題材とした近年の作品を組み合わせた「DEAD END」展(シャトー・ラ・コスト、2018年)では、身近な人々の喪失や不在と向き合いつつも、綿密に構築された展示空間からは、自身の物語を普遍的な物語へと転換させる虚構の力ともいうべき、彼女の芸術表現の特質を見出すことができた。
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