研究課題/領域番号 |
17K13369
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
園部 友里恵 三重大学, 教育学部, 特任講師(教育担当) (80755934)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インプロ / 高齢者 / ファシリテーター / 演劇 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
①インプロ実践におけるファシリテーション技術の理論的・方法論的検討:国内外のインプロ理論・方法論、インプロを用いた演劇実践研究を整理したほか、ワークショップ・ファシリテーションに関する他領域の先行研究を整理、検討を進めた。 ②柏市におけるアクション・リサーチ:高齢者インプロ劇団「くるる即興劇団」におけるインプロワークショップを毎月2回、一般公開パフォーマンスを2回開催した。ワークショップでは、毎回冒頭10~15分間を、高齢劇団員が持ち回りでファシリテーションを行う時間として活用し、段階的にファシリテーション技術を高めていくプロセスを解明するためのデータを収集した。インプロのパフォーマンスにおいても、高齢劇団員が、ファシリテーション・ディレクション(演出)を担える場を複数設定し、そこで起こったことを記述するとともに、個別インタビュー調査を実施し、高齢劇団員のファシリテーションに対する意識変容のプロセスを解明するためのデータを収集した。また、他者のワークショップからファシリテーション技術を体験的に学ぶために、ゲストファシリテーターを複数名招聘し、それぞれのファシリテーションの特徴を考察した。 ③成果の報告:以上の研究の中間報告として、次の4つの学会で発表した。日本教育学会(8月@桜美林大学、「高齢者インプロ(即興演劇)実践にみる〈老い〉への抵抗と受容」)、日本質的心理学会(9月@首都大学東京、「高齢者と非高齢者におけるインプロ(即興演劇)の意味付けの乖離:「ボケ防止」をめぐって」)、日本教育方法学会(10月@千葉大学、「高齢者インプロ実践のアクション・リサーチ」)、日本演劇学会(11月@愛媛大学、「仮面を用いた高齢者の即興演劇にみる〈老いた身体〉(福田寛之氏と共同発表)」。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、演劇未経験者でも参加可能でセリフの暗記等が不要な演劇活動である「インプロ」(即興演劇)に着目し、高齢者インプロ実践を行うにあたり、高齢者自身が主体的にファシリテーション技術を高めていくためのプロセスモデルを構築するものである。本年度は、初年度ということもあり、文献レビューと、実践におけるデータ収集につとめた。 ①文献レビューとしては、国内外のインプロ理論・方法論、インプロを用いた演劇実践研究を整理したほか、ワークショップ・ファシリテーションに関する他領域の先行研究を整理、検討を進めた。 ②海外先進的事例調査としては、当初予定していた米国の高齢者インプロ劇団「Antic Witties」の参与観察・インタビュー調査については、講師の引退に伴い解散となってしまったため、調査を実施することが困難となった。同劇団の他に、国内外において活動を継続する高齢者インプロ劇団についてリサーチしたが、管見の限り見当たらなかった。そこで、今年度は、国内において活動する優れたインプロ劇団(高齢者ではない世代で構成)の実践者をゲストファシリテーターとして招聘し、高齢劇団員自らがそのファシリテーションを体験する取り組みを行った。そして、高齢者ではない世代のファシリテーションと比較することによって、高齢者インプロにおけるファシリテーションの特徴を探究することを試みた。 ③柏市でのアクションリサーチ:当初の予定通り、毎月2回のワークショップと毎年2回のパフォーマンス上演を開催し、観察データを蓄積することができた。また、高齢劇団員への個別インタビュー調査を8月と3月にそれぞれ実施し、ファシリテーションに対する思いや考えに関する語りを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
①文献レビューについては、対象領域を広げながら、引き続き継続していく。 ②海外先進的事例調査については、【現在までの進捗状況】に記した通り、その対象であった団体の解散に伴い、理想モデルとする高齢者インプロ劇団が管見の限り見当たらなくなってしまった。今後、「くるる即興演劇」が高齢者インプロ実践の先進的モデルとなるという自覚を持つとともに、他世代のインプロ実践者によるファシリテーターの手法に学び、また、ときには多世代で協働のファシリテーションを行いながら、高齢者インプロ実践におけるファシリテーションの特徴について検討していきたい。 ③柏市でのアクションリサーチについては、今年度も毎月2回のワークショップと毎年2回のパフォーマンスを開催する。今年度と同様の手順でデータを蓄積し、最終年度(来年度)の目標である高齢者のファシリテーション技術の熟達プロセスの解明と支援モデルの構築につなげていきたい。 ④成果の報告の機会としては、2018年7月にニュージーランドで開催される国際学会International Drama in Education Research Instituteでの研究発表(題目「Spanning the Difference of Age: The Elderly and Reasons for Learning Improvisational Theatre from the Viewpoint of Youth」)が決定しているほか、8月~11月に国内で開催される学会においても積極的に成果を発表し、学会誌への論文投稿を行っていきたいと考えている。また、「くるる即興演劇」において今年8月と翌3月に一般参加者にも開かれたワークショップやパフォーマンスを実施することが決定している。こうした機会を活用し、より実践に直結した形で成果を発信していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由):柏市におけるアクションリサーチ(津-柏間の往復旅費)が1回分少なくなってしまったため。 (使用計画):平成30年度に実施する柏市へのアクションリサーチの旅費として使用する予定である。
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