本研究では、先行研究調査及び、現地でのフィールドワークを行うことで、カナダの演劇フェスティバルの地域的特徴を明らかにし、同時にフェスティバルが地域性の構築にいかに貢献してきたのかを解明することを目的とする。 当該年度は、これまで収集した資料を読み込むことで、代表的なフェスティバルの地域的特徴を捉えると同時に、国際演劇フェスティバルに焦点を当てて調査を行った。フェスティバル研究においては、フェスティバルに参加し、多くの作品を観ることが不可欠である。そこで、エドモントン・国際フリンジ・シアター・フェスティバルと、バンクーバーのシェイクスピア・フェスティバルであるバード・オン・ザ・ビーチ、そしてマグネティック・ノース・シアター・フェスティバルにて、観劇を行った。また現地では、劇作家や演劇研究者の話を直接聞く機会も得ることができた。 上記の研究成果の一部を、「2017年度のショー・フェスティバルにおける演劇の伝統と革新―積極的観客参加を中心に―」として『カナダ研究年報』に発表し、数々のフェスティバルで作品を上演している演出家ロベール・ルパージュに関する論考を、バンクーバーで開催されたカナダ演劇学会にて口頭発表した。また、昨年度行った口頭発表に加筆修正を加えたものは、『演劇学論集』に掲載が決定している。さらに、共著で『総合研究カナダ』を刊行した。本書の中では、カナダの舞台芸術を英仏両言語圏に分け、英語圏の舞台芸術の特徴を、主な劇場やフェスティバルに焦点を当てながらまとめ、フランス語圏の舞台芸術の歴史を時代の流れに沿って説明した。
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