本年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、インフォーマントに直接接触する調査は難航すると推測されるため、以下の作業を実施した。 (1)関東や関西、東海などの地域の三線の所有者の聞き取りを分析する。(2)三線に関する記述が残る書籍や新聞記事を収集・分析する。(3)三線職人からの聞き取りを分析する。(4)他の楽器と比較しながら、三線の楽器として特徴、あるいはモノとしての特徴を明らかにする。 分析の結果下記の点が明らかになった。 ⅰ)三線は人から人へと渡っていき、その過程で実用性や工芸品としての価値とともに、「履歴」が積み重なっていく。これは骨董品や三味線など他の伝統楽器でも評価される。三線の場合、市場が沖縄の人々(沖縄以外の地域に住む沖縄出身者を含む)にほぼ限られ、演奏者のつながりが密で個人間の取引が活発である点特徴であることが明らかになった。 ⅱ)近年、関東や関西、東海などを中心に他府県で三線愛好者が増加し、三線の収集を行う者も増加している。また全国的な沖縄ポップスのヒットとともに海外産の低価格の三線の需要が拡大する傾向が明らかになった。
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