本研究では明治以降に出版された雑誌類を中心とした活字資料の、地方における流通と普及、および受容のあり方について調査・分析することで、地域社会における大衆的な活字メディアの展開の様相を明らかにし、近代日本の活字文化・読書文化の一側面を記述することを試みた。具体的には、下記の3項目の実現を目指した。 1)地方における雑誌類を中心とした蔵書調査を行い、その目録およびデータベースを構築する。 2)蔵書調査の過程で得られた目録を参照し、雑誌類の流通機構や誌面内容を分析し、地域社会における普及・受容について明らかにする。 3)蔵書調査によって整理された資料を、将来的に存続可能なアーカイブとして管理・保存し、未来にわたって研究資源あるいは文化資源として活用できるよう体制を整備する。 以上の方針に基づき、延長も含めて通算4年にわたって調査・研究を進めてきたが、2020年2月以降は感染症の影響により予定していた調査が中止を余儀なくされたことから、それ以前に蓄積していた成果を基盤として考察することとし、当初の計画から軌道修正しながら研究した。これにより、①明治期や大正期の東北地方における雑誌メディアの普及と受容、および活用について事例的に明らかにし、②蔵書調査によって整理された資料を目録データベース化し、③②のデータベースをインターネット上に公開するという、主に3点の成果を得ることができた。また、最終年度は蓄積された資料や情報に基づいて派生的な対象の分析も行い、昭和期の雑誌メディアの展開についても研究した。これらの成果は、論文や口頭発表によって公表し、またデータベースの活用を促すための発信も併せて行っている。予定変更を余儀なくされたため一部は十分な進捗を見なかったが、当初計画の方向性に即して基本的な目標の達成は果たされたと考えられる。
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