研究課題/領域番号 |
17K13382
|
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
森 暁子 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 特任アソシエイトフェロー (50705788)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 武辺咄 / 兵学者(軍学者) / 武田流兵法 / 甲州流兵法 / 武家文化 / 軍書 / 加賀藩 |
研究実績の概要 |
本研究課題は3つの柱から成る。 令和元(平成31)年度は、【研究A】「兵学創始者による武辺咄作成」に関しては、小幡景憲の著作に登場する人物の特定作業を進め、また武士が自家について記録した文書との関連を探った。景憲の直弟子の大部の作品については引き続き翻刻作業を継続しながら、【研究B】にも関わる、兵学者の著作の形式の問題についても分析した。 【研究B】「兵学者の交流と武辺咄発生の現場」に関しては、加賀藩士の著作中に武辺咄の話者・登場人物として名前のみえる人物の特定を、金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵の史料調査を通して進めた。その結果、特定の学問や芸事などのコミュニティに身を置き、加賀藩でも重要な地位にあった人々との交流を解明することができた。兵学者が身を浴していた文化とそこから拾い上げられた武辺咄について、今後論文化する予定である。 【研究C】「武辺咄の継承と一般への伝播」に関しては、【研究B】の中心として研究している藩士の弟子筋、親類、知人の著作に、話題の継承をいくつか見出すことができた。 以上の成果により、【研究A】では近世初期に政権に近い場所にあった兵学者による武辺咄の営みを明らかにしつつある。【研究B】からは、雄藩で兵学者として活躍した人物の具体的な交流の様子と、武辺咄の生まれる過程の一角を解明することができた。【研究C】は、武士から武士へ武辺咄が伝わり、それぞれの興味で書き留められていく様子に光を当てつつある。いずれも、近世文学研究においてはまだまだ注目の薄い、武家の話題が近世の物語に入り込んでいく最初期の姿を見出したものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和元(平成31)年度4月から常勤となった結果、仕事量が増大し、十分な研究と調査の時間を取ることができなかったため。 そのため研究期間の1年の延長を申請し、すでに承認されている。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの影響でしばらく出張・調査を行うことが困難と予測されるため、手元の資料でまとめられるものから論文化をはかる。 【研究A】については小幡景憲の著作についてまとめ、武家の執筆活動の意図の問題に関連して、版本の作品についても論文化する。【研究B】については加賀藩の兵学者の身を置いた文化圏と交流の一端を、まず論文化する。 出張に赴くことが可能になり次第、【研究B】・【研究C】の追加調査を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況の理由」で述べた通り、仕事量の増加のため研究の時間が取れなかったため、次年度使用が生じた。 【研究B】・【研究C】のための調査費の一部に宛てたいが、出張に赴くのが難しいままであれば、主に【研究B】に関わる書籍の購入に宛てるつもりである。
|
備考 |
共同研究「軍記および関連作品の歴史資料としての活用のための基盤的・学際的研究」(2018~2020年度)の研究報告「『豊内記』の諸本について」於国文学研究資料館、2019年6月7日
|