研究課題/領域番号 |
17K13385
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
畑 有紀 名古屋大学, 人文学研究科, 博士研究員 (60768422)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食文化 / 近世文化史 / 近世文芸 / 料理書 / 本草書 |
研究実績の概要 |
本研究は、江戸期の庶民文芸、草双紙と浮世絵版画のうち、「食」を描くものを当時の調理、本草学上の効能といった観点から総合的に研究するものである。なぜこれらの文芸が生まれたかを、その前後に連なる食生活・習慣や文芸との関わりから検討し、江戸の文芸が生成される文化的背景と過程について明らかにするのが目的である。 本年度は、(1)黄表紙の中に擬人化される食物の分類・分析と、(2)錦絵に描かれた飲食について、研究を行った。 (1)では、前年度に調査・翻刻を行った黄表紙27点について、擬人化された食物が現れる場面とその役割を中心に検討を行った。特に、頻出する食物がどのように調理されるものであったかを、同時代の料理書から分析することができた。この成果については、「黄表紙の中の擬人化される食べ物」として学会報告を行った。また、前年度から継続して研究を行っている、酒を擬人化した黄表紙については、「黄表紙に擬人化される酒」として論文化したほか(現在印刷中)、「酒と菓子の優劣争い「酒餅論」と江戸の酒―擬人化される酒をめぐって―」として学会報告を行った。 (2)では、食物そのものではなく、広く飲食がいかに描かれたかを知るため、飲食を主題とする錦絵「飲食養生鑑」を取り上げ、飲食をめぐる臓器の機能がどのように文芸に表現されたかを、医学書や養生書を用いて検討した。その成果は、2019年4月に行われた研究会で報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は赤本・黒本に描かれた食物を分析する予定であったが、黄表紙の分析に時間を要してしまい、計画より遅れてしまっている。しかしながら、料理書による食物の調理法の分析を詳細に行うことができた。とりわけ、食物が描かれた組み合わせと、調理法について丹念に分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに予定していた赤本・黒本の調査・分析を急ぐ。調査の必要な資料の一覧は既に作成しているため、各作品に描かれた食物を抽出し、その調理法に関する分析を行う。これにより、料理と文芸の関わりを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記したように、黄表紙の分析に対して予想以上の時間を要してしまったこと、また昨年同様、長期海外出張に赴いたことから遅れが生じた。次年度は、草双紙や料理書の調査・翻刻など、資料作成を急ぎ、研究推進に努める。
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