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2019 年度 実施状況報告書

江戸期文芸を通じた食文化研究―「食」の現実と文芸化をめぐって―

研究課題

研究課題/領域番号 17K13385
研究機関名古屋大学

研究代表者

畑 有紀  名古屋大学, 人文学研究科, 博士研究員 (60768422)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード食文化 / 近世文化史 / 近世文芸 / 料理書 / 本草書
研究実績の概要

本研究は、江戸期の庶民文芸、草双紙と浮世絵版画のうち、「食」を描くものを当時の調理、本草学上の効能といった観点から総合的に研究するものである。なぜこれらの文芸が生まれたかを、その前後に連なる食生活・習慣や同時代の他の文芸との関わりから検討し、江戸の文芸が生成される文化的背景と過程について明らかにするのが目的である。
本年度は、主に(1)錦絵の中に描かれた「食」に関する教訓と食物、(2)赤本・黒本に描かれた「食」の分類を行った。
(1)では、「飲食養生鑑」と「麻疹禁忌荒増」の2点の錦絵を取り上げた。「飲食養生鑑」については、人体の臓器の機能を解説した詞書部分に着目し、その医学知識の典拠と、飲食に関する教訓とも呼べる記述が持つ問題点を見出すに至った。これらの成果を、海の見える杜美術館およびアマゾナス連邦大学(ブラジル、マナウス)での研究集会で報告した。さらに、幕末の麻疹流行時に生まれた「麻疹禁忌荒増」の詞書に挙げられた食物を分類し、それらが同時代の本草書にいかに記述されているかを分析した。その成果は、2020年に刊行される図書に掲載される予定である。
(2)では研究計画に従い、赤本・黒本のうち、①食物を擬人化するもの、②料理・献立が筋となり物語が展開するもの、③酒宴を描くものを抽出し、描かれた食物と場面の分類を進めた。本年度中に結論を出すには至らなかったが、次年度分析するための資料を作成できた。
このほか前年までに得た、黄表紙の中に擬人化された食物の分析結果について、日仏大学会館(フランス、ストラスブール)にて研究発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、江戸後期の錦絵に描かれた食物、あるいは「食」に関する教訓が分析の中心となり、赤本・黒本については、飲食場面を含む作例の分類に留まってしまった。ただし、本年度に扱ったこれらの文芸は、前年度までに分類・分析を終えていた黄表紙の前後に連なるものであり、広く「食」の描き方の変化を追う筋道を立てることができた。

今後の研究の推進方策

本年度までに、赤本・黒本について、どのような場面でどの食物が描かれるのかを把握すること、そしてその分類を終えることができた。したがって次年度には、その分類をもとに、該当する食物が同時代の料理書・本草書にどのように記述されているかを分析し、本研究課題のまとめとしたい。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度より継続して、他プロジェクト(国際的な活躍が期待できる研究者の育成事業)遂行のため、ヨーロッパを中心とする海外への長期出張が重なり、本研究課題の進捗に大きな遅れが生じた。次年度は、これまでに収集した資料の分類・分析、全体的な総括を行うことで、当初の目的達成を目指す。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 文久二年(一八六二)の麻疹流行と食物―麻疹絵が示す食養生―2020

    • 著者名/発表者名
      畑有紀
    • 雑誌名

      和食文芸入門(仮)

      巻: - ページ: -

  • [学会発表] The Personifications of Foods in the Late Edo Period : Why do the foods in Kibyoshi fight among themselves?2019

    • 著者名/発表者名
      HATA Yuki
    • 学会等名
      JSPS-MUFJ Seminar #215
    • 国際学会
  • [学会発表] 「飲食養生鑑」・「房事養生鑑」に表現される身体2019

    • 著者名/発表者名
      畑有紀
    • 学会等名
      国際研究集会「日本文化における身体」
    • 国際学会
  • [学会発表] 「飲食養生鑑」・「房事養生鑑」の教訓性2019

    • 著者名/発表者名
      畑有紀
    • 学会等名
      科研費基盤(B)・頭脳循環プログラムによる合同研究会

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公開日: 2021-01-27  

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