研究課題/領域番号 |
17K13390
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
木村 洋 上智大学, 文学部, 准教授 (70613173)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 文明史 / フランソワ・ギゾー / 田口卯吉 / 福沢諭吉 / 山路愛山 / 北村透谷 |
研究実績の概要 |
文明史と呼ばれた言説をめぐる思想動向を調査した。具体的にはフランソワ・ギゾー、ヘンリー・トマス・バックルの文明史、福沢諭吉『文明論之概略』(1875)、田口卯吉『日本開化小史』(1877-1882)、 『新日本史』(1891-1892)、『二千五百年史』(1896)などの言説を検討した。 また文明史から文学史が分岐、独立していく過程を調査した。主に三上参次、高津鍬三郎『日本文学史』(1890)、山路愛山「明治文学史」(1893)、北村透谷「日本文学史骨」(1893)を検討した。さらに日露戦争後の文学史言説、例えば『太陽 明治史第七編 文藝史』(1909)、『早稲田文学』の文学史特集(1910)、坪内逍遥、内田魯庵編『二葉亭四迷』(1909)などを吟味した。これらの調査によって得た知見を2020年度中に論文にまとめたい。 同時に徳富蘇峰の初期の思想を検討した。具体的には蘇峰『将来之日本』(1886)が民権思想の路線に修正を加えつつ、憐れみという感情に立脚する新たな政治思想を打ち出したことを明らかにした。この成果を「徳富蘇峰の思想と文体 ―『国民之友』創刊前後」(鈴木健一編『明治の教養』勉誠出版、2020)という論文にまとめた。 さらに二葉亭四迷、内田魯庵、山路愛山たちが従来の俗語観を変革していく展開を考察した。この検討から二葉亭たちの試みが知識人と下層民のあいだの序列的な言論秩序の改変につながったことがわかった。この成果を「ポヱチカルな俗語 ― 二葉亭四迷と民友社」(『上智大学国文学科紀要』2020)という論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
とくに大きな問題は見られない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き文明史をめぐる明治期の思想動向を検討する。政教社同人や小説界の動きも視野に入れつつ、この頃の思想と表現の歴史を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度分の研究費を消化しきれず、少額ながら次年度使用額が生じた。その分を2020年度の研究のために用いたい。
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