描き出される物語に着目することで、戦後マンガが戦前の児童文化との間にいかなる連続性と画期性を有しているのかを見出すことができた。戦前・戦中期の時点で、海外児童文学の影響を受けつつ、孤児を主人公に据えた作品は広がりを持ち得ていた。こうしたモチーフを生かしながら、手塚治虫による戦後の赤本マンガ作品では、時間経過に伴う登場人物の内面的な変化に焦点化するプロットが実現された。この種の物語性は、月刊少年誌や週刊少年マンガ雑誌を中心とする戦後のマンガ文化にも受け継がれる。そこでは、キャラクターの葛藤と結びつける形で社会問題の作中への導入が図られ、所与のものとしての善対悪という枠組みの問い直しも試みられた。
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