研究課題/領域番号 |
17K13393
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
倉田 容子 駒澤大学, 文学部, 准教授 (80618843)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 政治小説 / 宮崎夢柳 / ジェンダー / 自由民権運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、明治期政治小説の代表的な書き手である宮崎夢柳の小説・漢詩を主な研究対象とし、女性表象の変遷と特質および、同時代の自由民権論・女権論との連関性を、明治初期の文学史と思想史の複合的状況から検討するものである。初年度にあたる平成29年度の成果は、以下のとおりである。 (1)夢柳作品における女性表象の変遷について、調査・整理を行った。その成果は、2017年9月17日(日)・18日(月)に駒澤大学にて開催した「革命とジェンダー研究会」にて報告した。今後、内容を修正の上、研究論文として公刊を目指す。 (2) (1)の調査に基づき、とくに夢柳に特徴的と思われる女性像が描かれた「芒の一と叢」を取り上げ、プレテクストとの比較検討を行った。その成果は、研究論文「宮崎夢柳『芒の一と叢』における女性表象」として全国大学国語国文学会「文学・語学」(2017年9月)に発表した。具体的には、「芒の一と叢」の修辞における幕末の勤王志士の漢詩文の影響を検証した上で、本来それらの修辞から疎外されていた女性性を介することによって、小説内において尊王攘夷から「自由権利」への価値転換が行なわれていることを明らかにした。 (3) (2)のような女性表象が生み出された背景を明らかにするため、高知市立自由民権記念館にて土佐自由民権運動に関する資料を渉猟した。その結果、これまで戯作的な習作と目されてきた夢柳の初期作品にも、土佐自由民権運動の文脈が刻印されていることを明らかにした。その成果は、論文「土佐を歩く夢柳――初期テクストと土佐自由民権運動の距離」として、「駒澤國文」(2018年2月)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、おおむね順調に進展している。ただし、高知市立自由民権記念館にて行なった調査により、当初想定していた以上に夢柳の創作が土佐自由民権運動の文脈と不可分であることが明らかになった。夢柳作品の修辞については主に江戸後期の漢詩文との関わりを考察する予定であったが、今後、調査範囲を再検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた結果を基にして、夢柳の女性像の変遷について、文学史および思想史との影響関係を検討する。成果は、関連学会・研究会にて随時発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、夢柳作品と江戸後期漢詩文の関わりを調査する予定であったが、研究の進展に伴い、調査範囲に修正が生じたため、資料の購入計画も見直すこととなった。今後、修正した計画に従い、資料収集に使用する予定である。
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