研究課題/領域番号 |
17K13393
|
研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
倉田 容子 駒澤大学, 文学部, 准教授 (80618843)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 日本文学 / 自由民権運動 / ジェンダー / 宮崎夢柳 / 政治小説 |
研究実績の概要 |
本研究は、明治期政治小説の代表的な書き手である宮崎夢柳の小説・漢詩を主な研究対象とし、女性表象の変遷と特質および、同時代の自由民権論・女権論との連関性を、明治初期の文学史と思想史の複合的状況から検討するものである。前年度の高知市立自由民権記念館等での調査により、これまで考えられていた以上に夢柳の創作が時事的な文脈と密接に関わっていたことが明らかになった。2019年度は、これを踏まえて研究計画を修正しつつ、以下の調査・検討を行った。 (1)夢柳のテクストにおける女性像の変遷を整理した上で、そこに見られる「私事」と「主義」の境界および女性規範の変化と、明治初期の公的領域/私的領域の再編との連関性について、同時代の思想的文脈(法的言説、自由民権論、女権論)を視座として検討を行った。その成果は、「「鬼啾啾」における「主義」と「私事」」(「駒澤國文」2019年2月)に発表した。 (2)夢柳の政治小説における女性像と、実際に自由民権運動に関わった女性活動家をめぐる言説状況との関係性について考察するため、景山英子をめぐる同時代の言説および彼女自身の思想について調査・検討を行った。その成果は、2018年11月10日(土)・11日(日)に中部大学で開催された「革命とジェンダー研究会」にて報告した。今後、内容を修正の上、研究論文として公刊を予定している。 (3)(2)の調査を進める一方で、女性像と「自由」の概念のその後の展開について検討するため、大正・昭和期を含む社会主義の系譜およびその文学作品におけるジェンダーの問題について調査を開始した。また、日本文学領域における〈差異の政治〉の歴史と問題点を検討した「断片化に抗う――『ナチュラル・ウーマン』受容史とクィア・リーディングの行方」(「昭和文学研究」2018年9月)も女性表象と「自由」の概念に関するものであり、本課題に関連する業績である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の調査に基づき当初の計画を修正し、同時代における公的領域/私的領域の境界をめぐる言説の錯綜や流動性に焦点を当てたことで、夢柳のテクストの性質についてより適切な把握が可能になったと考えている。また、自由民権運動から明治社会主義に至る思想史の文脈において景山英子をめぐる言説や彼女自身のテクストを再検討し、さらに社会主義文学の系譜についても調査を進めることで、明治から昭和初期に至る政治と女性の問題系を立体的に把握することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2019年度は、これまでの研究成果を研究発表や論文の形で公表するとともに、本研究を含む「自由」と女性表象をテーマとした書籍の刊行準備に入りたい。また、研究計画の修正に伴って考察から抜け落ちていた夢柳の修辞の特色についても、考察を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたよりも物品費を安く抑えることができたため未使用額が発生した。次年度以降も物品購入に使用する。
|