本研究の目的は、近世に刊行された唱導資料『類雑集』が、どのような作者圏で「生成」され、どのような読者に受容されたのかという「展開」を明らかにすることである。 これまで、本文や引用文献の分析から「日蓮宗総本山身延山久遠寺周辺で作られた可能性」を指摘した。また、書き入れの内容から「日蓮宗の信徒や近しい思想を持つ読者」が受容していたと推測した。これらのことから、『類雑集』が刊行された背景には「特定の宗教教団が存在し、教化の意図を以て生成・再生成を行った」と結論づけた。このことは、近世において出版活動や布教活動が唱導資料の「生成」に深く関わり、作品は制作意図どおりに「展開」されたことを意味している。
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