研究課題
若手研究(B)
文運東漸後の上方の文学の意義を捉え直す為、図会と絵本読本を研究対象の中心として、作品制作の具体相、様式の成立と展開、作者の用いた小説の技法と趣向、上方文学界の動態との関係について解明を行った。その結果として、図会もの読本の主要作者秋里籬島による歴史叙述における実証性の重視や、創作性の志向に限らない着想や編集の試みが明らかとなり、また、これらの事象には当代性が窺えた。ほかに、図会様式の諸ジャンルへの適応性の高さや、作中での文学的素養の発揮をめぐる文壇の営為との相互作用も明らかとなった。
日本近世文学
従来、近世中後期の上方の文学は低調と見做されることが多かったが、十分に解明が尽くされているとは言い難かった。そして、これまでの評価は主に創作性の観点でなされてきた。本研究は、作者・作品に関して中後期上方の文学の具体的解明を進展させた意義があるとともに、作品群の持つ特質・傾向について、ジャンル間の接続関係も解明しつつ、作者の志向を捉えることで新たな見方を提示した点に意義がある。また、図会は時代の文化事象であり、文化史の解明としても意義があると考えている。