研究課題/領域番号 |
17K13405
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山内 玲 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (60609874)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アフリカ系アメリカ文学 / Wideman / Naylor / Morrison / The Tempest |
研究実績の概要 |
本年度は、研究計画初年度にあたり、主に文献収集と調査が中心となった。この調査をもとに、次年度以降の研究発表を行っていくこととなる。 具体的には、2018年5月にアメリカで開催されるMELUS(Multi-Ethnic Literature of the United States)の大会で、John Edgar Widemanの作品におけるカリブ海の『あらし』の翻案の再翻案に関する研究発表を行う予定である。本年度の後半はこの研究発表に向けての準備が中心となった。発表内容は以下のとおりである。 Widemanの代表作であるPhiladelphia FireにおけるShakespeareのThe Tempestの翻案を考察するに当たり、従来の評価はカリブ海の反植民地主義に基づく翻案をアフリカ系アメリカ人の問題に置き換えるという意味での肯定的な評価と、反植民地主義の下で顕在化される性差別的要素、即ち植民者の娘であるミランダに対し性的暴行を試みるキャリバンの描写が、性欲旺盛な黒人男性というステレオタイプの再生産となり、かつ性差別的な要素を無批判に繰り返していることへの否定的な評価とに分かれていた。肯定的であれ否定的であれ、いずれにせよアフリカ系アメリカ人男性の問題として『あらし』の翻案を行うことに先行研究の関心は注がれていたのである。 それに対し、本発表では本作中のキャリバンの解釈において、メタフィクションの体裁をとりながら示されるWideman自身の伝記的な父子関係が重要な役割を果たしていることに着目し、従来の批評で見逃されてきた雑種性の意義を論じるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献収集に際し、当初想定していた文献が入手できなかったことに加え、次年度の学会発表に向けて準備をしていた際に、カリブ海の文学の翻案という問題をアフリカ系アメリカ人という枠組みから考えるという当初の前提に対し、アフリカ系アメリカ人という枠組みには包摂できない白人性の問題を考える必要が生じ、そのための文献調査を新たに行う必要が生じた。そのため、当初の予定より調査すべき文献が増えたため、予定より遅れている次第である。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたとおり、今年度は文献収拾と調査が中心となった。その調査を元に研究発表・論文作成に向けて作業を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカで行うMELUSの研究発表が、例年3月であったのに対し、今回は5月に開催されることとなった。そのため、初年度(2017年度)の予算を翌年度に繰越し、旅費にする必要が生じた。
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