研究課題/領域番号 |
17K13413
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
市川 純 日本体育大学, 体育学部, 助教 (70507970)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヘレン・マライア・ウィリアムズ / ペルー / コツェブー / 奴隷制 / スペイン |
研究実績の概要 |
2017年度はアウグスト・フォン・コツェブーの劇『ペルーのスペイン人』の研究についての成果を国際学会で口頭発表したが、この発表原稿を大幅に加筆・修正して論文にまとめ、学内紀要『日本体育大学紀要』第48巻第1号に「ゴシックの悪漢としての『ピサロ』―-『ペルーのスペイン人』の歴史的背景」に集約させた。これにより、本研究のコツェブー劇に関する部分は一区切りがつけられる状況となった。 2018年度はこれに続いてヘレン・マライア・ウィリアムズの長詩『ペルー』を中心に分析した。1784年に初版が出版された『ペルー』と、これを後に改訂した「ペルーの物語」(1823)とを比較考察し、この時代変遷の中に起こった世界史的変化――具体的にはフランス革命やナポレオン戦争とその影響を受けたイギリス社会における世論の変化、その中でのヘレン・マライア・ウィリアムズの政治的立場――を加味した分析を加えた。 ウィリアムズの『ペルー』は彼女自身の反奴隷制の主張やリベラルな政治的立場を反映したものであるが、文学作品の中で彼女の政治的主張をペルーの征服戦争に重ねて描く上では、歴史上の人物の性格描写などにある種の脚色を施す必要があり、それによってスペインの征服者がペルーの原住民に対して行った残酷な仕打ちに対する巨大な批判的原理を生み出そうとしていることが見えてきた。 このような分析を国内学会にて口頭発表し、さらに詳しい考察を加えた論文を執筆、学会誌に投稿し、無事受理、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘレン・マライア・ウィリアムズの研究についてはこの1年で充分な成果があげられたと考えている。ただし、多忙な校務を抱える中でこれだけの成果をあげるためには、相当の身体的負担を伴った。次年度はよりゆったりとした時間を十分に確保して研究に臨みたい。そうでなければ「当初の計画以上に」研究が「進展」することは不可能である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度までの2年間の研究を遂行する中で、ロマン主義時代の文学作品におけるペルー表象を分析するには、同時にペルーに対して征服戦争を行ったスペインのイメージというものについても考察しなければいけないと考えるようになった。スペイン表象というと大きなテーマになるが、ここではペルーの征服戦争との関係に限定したうえで、イギリス文学におけるスペインのイメージということも意識しつつ、研究を進める所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算に過不足のないような研究計画を立てて遂行しているが、洋書の値段などは為替変動や購入先などによって大幅に変わることもあり、また、新品が購入できずにやむを得ず古書店を探すようなことも頻繁に起こりうる研究分野であるため、上記次年度使用額が生じた。しかし、これだけ低く抑えられていることはむしろそれ相当の努力をしていることを申し添えておく。
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