研究課題/領域番号 |
17K13421
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
塚島 真実 大谷大学, 文学部, 助教 (80761402)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フランス文学 / フランス詩 / 宗教教育 / ランボー / 19世紀 / 文芸雑誌 |
研究実績の概要 |
本研究は、フランスの19世紀、特に1850年代から1870年代の、高踏派からランボーにいたる作品におけるヘレニズムとキリスト教の混淆を明らかにすることを目的としている。平成29年度は、ランボーの韻文詩における詩人像に焦点を当てた。 19世紀前半のロマン派の詩人においては、イエスや聖人といった、英雄性と悲劇性を同時に体現する形象が主要な詩人像であった。19世紀後半の高踏派・象徴派と呼ばれる詩人たちは、そうした形象に同化することは少ない。ランボーは、多分にロマン派的な「見者」像成立以前、どのような詩人像をもっていたか。その点について、ボードレール、バンヴィル、ヴェルレーヌ、マラルメら、19世紀後半の詩人たちがこぞって詩人像とする「道化」を取り上げ、ランボーにおける詩人像と「道化」像との関連を考察した。「道化」が芸術家としてある種の超越性・聖性を付与されて描かれるのは19世紀の詩に特有の現象と考えられるが、一方でそうした道化的芸術家像は「ブルジョワ/芸術家」という構図が産み落としたモデルでもある。ランボーはそうした社会的構造には関心がなく、道化のもつ超人的な身体性に注目をしている。 また、高踏派の詩人たちは文芸・美術批評でも活躍しており、そうしたテクストにおいて詩における理念や美学に通底する考えが披歴されている。神話的形象が頻出することによって構築される幻想世界は、特に小説において興隆したレアリズムや自然主義が描く現実社会に対抗するものであった。このように詩以外の作品についても、主として文芸雑誌の記事を手掛かりに分析のコーパスを広げて考察を深めた。こうした分析の成果の一部をまとめ、学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀後半の宗教教育および批評に関する文献調査をフランスで行う予定であったが、フランス滞在に十分な日程を確保することができなかったため断念した。一方で、すでに入手した資料の読解を進めた。教育に関する資料の読解は上記の事情もあり遅れているが、高踏派の作品読解は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
詩作品に加えて、詩人の著した文芸・美術批評についても、本研究の中心的対象である1850-70年代に活躍した詩人のテクストに限った上で分析に取り入れ考察を進める。特に今年度にランボーとの比較分析を着手したバンヴィルの批評について、継続的に研究を進める予定である。また、教育の資料に関しては、フランス語科目の修辞学および文学の教材に重点を置いて読解を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度はフランスにおける文献調査および研究発表を予定していたが、研究計画を立てた当初とは異なる教育・研究環境となり日程の都合がつかなかった。次年度使用額分は旅費および書籍の購入に繰り入れる予定である。
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