研究課題
若手研究(B)
本研究は、フランスの19世紀、特に1850年代から1870年代の、高踏派からランボーにいたる詩作品におけるヘレニズムとキリスト教の混淆を、文学創造に教育が与える影響の観点から考察した。詩作品における神的形象の身体描写の典型的要素に19世紀当時の修辞学および文学の教材が一定の役割を果たしていること、また、伝統的な詩型をもつ作品においても新たな科学的知識や民衆文化が柔軟に取り入れられ、「規範」からの超出が目指されていたことを明らかにした。
フランス文学
本研究の第一の意義は、神的形象という具体的な分析対象を据えて、作者である詩人を出発点に政治的言説や歴史的著作、造形美術といった多分野の様々な媒体へと射程を広げるというアプローチを取ることで、領域横断的に宗教性を究明していく可能性を示したことである。第二の意義は、文学作品の分析方法を学校教材に使用された文献に適用することにより、宗教・道徳教育のための教材作成の戦略を綿密なテキスト分析によって明らかにし、文学研究と教育史研究を架橋する新たな方法論の端緒を示したことである。