本研究を通じて、ベルギー・オランダ語圏において象徴主義が従来考えられていたよりも早い時期に受容され、かつフランス以上に同郷のフランス語圏の象徴主義運動から多くの影響を受けていたことを明らかにすることができた。フランス語文学においては、「現実的幻想」を手掛かりとして象徴主義世代と次世代との繋がりを指摘すると共に、この詩学が第二次世界大戦後にオランダ語圏で展開した魔術的リアリズムにも共有されており、象徴主義に端を発する幻想詩学の系譜が、次世代、及びオランダ語圏においても認められ、世代、語圏を超えた射程を有するベルギー特有の幻想詩学の伝統の一端を成していることを明らかにすることができた。
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