研究課題/領域番号 |
17K13434
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 孝子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (10746879)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 書儀 / 『五杉練若新学備用』 / 敦煌 |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究の初年度であることから、基盤となる作業として、書儀関連の文献資料や書儀に関わる記録を網羅的に調査・収集することに重点を置いた。 研究計画に基づいて、駒澤大学図書館に所蔵される朝鮮重刊本『五杉練若新学備用』のテキストの整理作業を進めた。敦煌発見の書儀や司馬光『書儀』など関連資料との比較しながら考察を加え、釈文・試訳を完成させた。次の段階として、注釈の作成作業に取り組むと同時に、校訂テキスト・訳文の精度を上げていく必要がある。すでに部分的に着手しており、その過程で気づいた当時の書式や言語表現に関わる問題について検討を行っているところである。まずは、吉儀全体に関わる凡例を記した「論書題高下」について、初歩的な考察を加えた。次年度以降個別に論考としてまとめ発表していきたい。
また、以前よりデータ化を進めていた敦煌発見の書儀についても、最新の研究成果を反映させながら、テキストを修正し、逐次更新を行っている。 フランス国立図書館において、ペリオ蒐集クチャ・ドルドルオコル発見文書および敦煌発見文書から、手紙の実物や封皮紙の実見調査を行った。ドルドルオコル文書の図版はやや鮮明さに欠けるモノクロ写真が提供されているのみであり、細部が不明であったが、実見により、目録情報の不備に気づいた。また、封皮紙の復元のために重要な情報を得ることができた。調査結果を踏まえ、敦煌以西における書儀の普及について考えていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」の通り、研究の基盤となる作業はおおむね計画通りに進んでいる。ただ、フランス国立図書館の実見調査では一定の成果を得られたが、一方で、折り目や紙の厚さなど期待していた情報を得ることができなかった。その原因は、今回実見した敦煌発見の手紙は、修復が行われており、gallicaで公開される写真と状態が明らかに異なっていたこと、ドルドルオコル発見の文書は、ガラス板に挟まれた状態であったこと(一部についてはガラスに亀裂が入っていたため、裏面の確認も許可されなかった)にある。今後他の所蔵機関で調査を予定している資料についても、保存状態が調査に影響する可能性が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
『五杉練若新学備用』の注釈作成の作業を継続するとともに、内容について分析を行う。2018年度中に、台湾の研究者により『五杉練若新学備用』に関する専著が刊行される予定である。その内容を受けて、意見交換し問題を共有するつもりである。状況によっては、作業の方針の変更や研究計画の修正が必要になるかもしれない。 また、あわせて書儀に類する朝鮮半島で編まれた資料の考察を進めていく。特に、書式や言語表現に注目して、中国のものと比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ入力のための謝金の支出を予定していたが、研究代表者自身で作業を進めたため、不要となった。また、海外の学術誌への投稿や学会での口頭発表原稿の翻訳・校閲のための謝金も外部委託しなかったため差額が生じた。 差額分は、「今後の研究の推進方策」に記載した台湾の研究者との情報交換・共同研究の場を設けるために使用したい。すでに講演依頼をし、先方からも承諾を得ている。この招聘のための費用は、交付時には計画になかったものであり、差額分で補填するとともに翌年度分と合算して使用する。
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