研究課題/領域番号 |
17K13434
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
山本 孝子 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (10746879)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 敦煌 / 書儀 / 書式 / 私信 |
研究実績の概要 |
本年度における具体的な研究実績は以下の通りである。 (1)研究例会の開催: 2018年度 東西学術研究所非典籍出土資料研究班と共催で、『五杉連若新学備要』と非典籍出土資料(主に敦煌吐魯番発見の写本資料)をテーマとして、研究例会を開催した。例会では、台湾より王三慶国立成功大学名誉教授をお招きし、「五杉集對儒釋凶禮的受容」という題目で御講演いただいた。研究代表者も「唐宋時代の門状――使用範囲の拡大と細分化」と題する研究発表を行い、「門状」という書式に焦点を当てて、分析を行った。本発表の内容は、次年度公刊の非典籍出土資料研究班の報告書にまとめる予定である。また、王氏の来日中に研究打ち合わせの時間を設け、それぞれの関心の所在や問題意識、最新状況の共有を行うことができた。 (2)公刊された成果: 「書儀に見られる「【片+旁】子」」(『敦煌写本研究年報』13)では、P.3449+P.3864「(擬)刺史書儀」および応之『五杉練若新学備用』に見られる【片+旁】子について考察を加えた。これは、「2018敦煌論壇:敦煌与東西方文化的交融国際学術研討会」(2018年8月開催)および「中日敦煌写本文献学術研討会」(2018年9月開催)での口頭発表した内容に基づくものである。また、本課題と関連のある研究著書に対して、書評論文にまとめた。(「《敦煌所出唐宋書牘整理与研究》評介『石河子大学学報(哲学社会科学版)』32ー5)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外での学会報告・論文執筆について、計画通り成果発表が行なえており、おおむね順調に進展しているといえる。この間に、本課題の研究対象である『五杉連若新学備要』に関する専著(王三慶『中國佛教古佚書《五杉練若新學備用》研究』新文豊,2018)が出版されたが、書儀に関わる内容に重点が置かれているわけではなく、研究計画に大きな影響はない。『五杉練若新学備用』のテキストの整理作業については、本書を参考にしつつも、独自のテキストを完成させたい。また、本書の全体あるいは本研究課題と特に関わりのある主張に関しては、書評や今後の論考において議論を展開したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、これまでの研究成果・調査結果を順次論文としてまとめ、公表していきたい。敦煌吐魯番発見の資料や『五杉練若新学備用』に比べて、朝鮮半島に伝わる漢文書簡の書式に関わる資料についての調査・検討がやや不十分であるため、積極的に取り組む。書儀の普及と受容のあり方について、各地域・各時代における状況を比較・検討し、中国の書札礼の普及・変容・独自の形成・発展の軌跡を追う。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国語での論文執筆に当たり、ネイティブによる校閲あるいは日本語からの翻訳を依頼し、謝金を支出する予定であったが、すべて研究代表者自身で行ったため支出がなかった。また、当初見積もっていたよりも図書購入のための費用がおさえらえた。『五杉練若新学備用』の資料価値について、中国台湾の研究者にも徐々に注目されつつあることから、当初の計画になかった小規模なワークショップの開催、あるいは研究打ち合わせ・意見交換の場を設け、未使用金額はこの費用の一部に充てたいと考えている。翌年度分として請求した助成金については、計画通り、成果発表や調査にかかる旅費や図書購入費、謝金として支出する予定である。
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