本研究は「主要部名詞を欠き、一見すると形容詞が主要部である名詞句」の歴史的変遷を観察し、特に現代英語では複数の人間を表す表現として用いられるHUMAN構文の史的発達を明らかすることを明らかにすることが初期の目標としていたが、平成31年度(令和元年度)には、前年度までの調査及び研究から明らかになってきていた"the gap between the richer families and the very poor"のような、顕在的でない名詞が「人」以外を指す現象が現代英語においてもみられる事実の観察を継続した。 前述の現象(Adjective1 + Noun + and + Adjective2)の典型例では、特に等位接続された要素に含まれる形容詞に意味的な対立がみられること、そして、この視点で見れば、古英語から現代英語まで継続して観察される事実は、前年度までで明らかした。しかし、より詳細に観察を続けることで、形容詞間に意味的な対立がない場合でも、同じような構造で現れていることが分かった。また、そのような事例では、対立がみられる場合と異なり、同一の個体を2つの形容詞が修飾していることも明らかになった。このことから、Adjective1 + Noun + and + Adjective2という語の配列をもつ2つの別個の構造が存在すると指摘し、その内部構造を生成統語論の観点で分析した。 本研究の結果や統語分析は、国内学会(日本英語学会ワークショップ、日本英文学会東北支部シンポジウム)、海外学会(The 24th Conference International Conference on Historical Linguistics)で口頭発表し、学術誌(東海英語研究第2巻)で論考をまとめた。
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