研究課題/領域番号 |
17K13448
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川原 繁人 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 准教授 (80718792)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 音象徴 / ポケモン / プリキュア / オムツ / 理論言語学 / 最大エントロピーモデル |
研究実績の概要 |
本年度は、研究実施計画通り、さまざまなジャンルにおける名前の音象徴の研究を続けた。中でも中心となったのはポケモンの名前における音象徴で、様々な新たな実験に加え、対象となる言語を英語、中国語諸方言、ロシア語、韓国語、ポルトガル語などに拡大して分析を行い、論文としてまとめた(国際共同研究、共著)。過去の研究では、ポケモンの進化レベルや強さなどを分析対象としていたが、新たな研究によって、ポケモンのタイプという複雑な概念までも、音象徴的に表現される可能性が示唆された。また、過去に行った実験結果の多くを学術論文としてまとめ、本年度中に出版されたものも多くあった。さらに、本ポケモン研究の一部が一般雑誌(『子供の科学』『ケトル』)などにも掲載され、音象徴研究を広く一般に知って頂く機会を得た。
また、ポケモン研究の他、分析の対象をプリキュアの名前やオムツの名前に広げた。さらに、これらの研究の成果を教育に生かす方法も模索し、実際の授業や講演会で実践し、その成果報告を論文としてまとめる機会を得た。上記の論文の数点は学生手動のプロジェクトから始まり、出版にいたったものである。この点においても、音象徴研究が教育に寄与する意義は大きいと結論づけられた。また、Eテレの『ろんぶ~ん』においても音象徴研究の論文が紹介され、本研究を広く知ってもらうこととなった。
これらの研究によって新たに明らかになった課題を検証するため、多くの実験を行い、現在分析中である。また、これらの研究の成果から、音象徴が理論言語学の発展(特に最大エントロピーモデル)に寄与できるものであるという確信にいたり、この点に関しても論文を執筆している。音象徴は、元来、理論言語学の研究対象に含まれていなかったが、今後この状況を変えていくためにも積極的な学際的研究を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、数多くの論文を出版した(国内学術雑誌・海外学術雑誌を含む)点において、研究は非常に順調に進行していると言える。また、アメリカ、シンガポールやブラジルの研究者との国際的な共同研究も順調に進んでおり、随時新たな分析が行われている。さらに、音象徴は学生にとっても研究がしやすい分野であり、学部教育・大学院教育への応用も順調に進んでいる。上記の通り、学生との共著論文も数点出版された他、国内学会において発表が行われた研究もある。一般メディアで取り上げられる機会が増えたこと(『子供の科学』『ケトル』『ろんぶ~ん』など)も、本研究が順調に進んでいることの証拠として捉えて良いであろう。また、論文執筆だけに留まらず、新たな実験も多く行った。過去の研究に基づいた日本人を対象にした実験だけなく、対象言語は韓国語・英語・ポルトガル語などに広がっている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、今年度の研究で得られた知見をもとに多くの実験を行っている。既に完了した実験のデータは随時分析を行い、学会での発表や学術論文としての発表の準備を行う。また、国際共同研究が進み、共同研究者が増えるにつれ、新たな分析方法が有効である可能性が浮上してきた。例えば、クラスター分析を用いて、実在のポケモンの名前や実験によって得られた名前の中にどのようなパターンが潜んでいるかを明らかにする方法論の利用が有効である可能性が示唆され、この新たな分析によって多くの新たな知見がもたらされることが期待される。また、さらなる実験が必要になる可能性も高く、随時追加実験を行う予定である。
また上記の通り、音象徴は理論言語学の範疇に含まれないことが多かったが、本研究によって、音象徴研究が理論言語学の発展に寄与するものであることが明らかになってきた。この方法論的メッセージはLanguage and Linguistic Compassに出版予定の論文にまとめられている。さらに、この点に関するケーススタディとしての論文を2本出版準備中である。本研究は音象徴の具体的な研究に留まらず、理論言語学の範疇を広げるという新たな意義が浮上してきており、この点において議論を進めていく。
さらに、申請者の本務校だけに留まらず、音象徴を学部教育に応用する試みは広がっており、他大学の学生との予備的なミーティングも行った。まだ計画段階であるが、複数の大学の研究者と連携して、このような学生たちがお互いの成果を発表する場を学会でもうける計画も進んでいる。最後に、機会が許す限り、本年度に続き、今後も一般メディアへの発信も積極的に行う。
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