研究実績の概要 |
本研究の目的をもっとも一般的に述べれば、「理論言語学の観点から、意味と音の体系的なつながりである音象徴現象を分析し、音象徴を理論言語学の枠組みで分析することの意義を示す」ことであった。この研究の総括ともいえる論文がKawahara, Shigeto (2020) Sound symbolism and theoretical phonology. Language and Linguistic Compass 14(8): e12372として出版された。また、ポケモンの名前で観察される音象徴パタンを理論言語学で用いられる最大エントロピーモデルを用いて分析した論文が、理論言語学で権威のある雑誌Phonologyから出版された(Kawahara, Shigeto (2020) A wug-shaped curve in sound symbolism: The case of Japanese Pokemon names. Phonology 37(3):383-418.)。 これらの論文の他、さまざまな音象徴現象を色々な観点から分析し、Journal of Laboratory Phonology, Phonological Studies, Open Linguistics, Journal of Portuguese Linguistics, Journal of Japanese Linguisticsなどから論文を出版した。これらの研究を通じて、元来理論言語学ではあまり注目されていなかった音象徴現象が、一般的な音韻現象と似たような特徴を持っていることが明らかになった。これらの論文出版に加え、日本音声学会・日本音韻論学会・日本認知言語学会などでも積極的に学会発表を行った。最終年度に国内外の学術雑誌から広く出版し、多くの学会で学会発表を行えたことは、本研究の大きな成果と言える。また、音象徴を教育面でも活用するという試みを実践し、その内容に関してもいくつかの論文にまとめることができた(例えばKawahara, Shigeto (2020) Teaching and learning guide for "Sound symbolism and theoretical phonology". Language and Linguistic Compass 14(8): e12376)。また早稲田大学の細馬宏通氏との対談を行うなど、アウトリーチ活動も積極的に行った。
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