研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、伝達内容を効率的に伝えるレトリックの成立に関与する諸要因を、換喩(メトニミー)の言語学的分析を通じて考察することである。日本語の文学テクストからレトリックの用例約2,500例を独自に収集し、意味論、文法論、認知言語学の観点から分析した。その結果、換喩は人間をとりまく、身体的、精神的、文化社会的フレームと密接に関わる表現手法であること、動詞の換喩にはアスペクトについて顕著な傾向があること、ひとまとまりの全体として認知しやすい概念が、換喩の媒体になる傾向があることが明らかになった。
認知言語学
分析情報を付与したレトリックの用例データは、『日本語レトリックコーパス』のベータ版として、ウェブ上で公開した。このコーパスにより、機械的に収集することが難しいレトリックの用例に、誰でも容易にアクセスできるようになった。また、具体的な換喩のタイプにしぼった事例分析の結果から、換喩の成立基盤には、談話文脈や文化的背景がかかわることが分かった。この知見から、レトリックの言語研究には、コミュニケーション学的視点や、言語人類学的視点を取り入れた学際的研究が必要であることが明らかになった。