研究課題/領域番号 |
17K13452
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
川澄 哲也 松山大学, 経済学部, 教授 (30590252)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 漢語 / 方言 / 言語接触 / チベット語 |
研究実績の概要 |
2018年度は8月に2週間程度、中国青海省の西寧市と大通県において、実地調査および資料収集を行った。それ以外の期間は、自身が得た一次データと先行研究が提出した二次データに基づいて、漢語がチベット語と接触した場合に起こし得る言語変化の類型を抽出した。その結果見出された具体的な変化は以下のとおりである:1)漢語本来のSVO構文から、SOV構文を多用するようになる。2)漢語としては特異な、名詞に後置する格標識を使用する。3)複数標識の用法が、非人間名詞へも付加されるように拡大する。4)数量修飾語が被修飾名詞に後置されるようになる。5)形容詞修飾語が被修飾名詞に後置されるようになる。6)文末助詞について、主観-客観パースペクティブの対立をもつようになる。 この類型は、中国西北地方に分布する、接触に起因して変容していることは明らかであるものの、具体的にどの言語と接触したかまでは判明していない漢語諸変種の形成史を解明するのに役立ち得る。その事例研究の一つとして、先行研究では専らモンゴル系言語「土族語」との接触に因り変容を来したと見られてきた漢語甘溝方言(青海省海東市)について、上記の類型に依拠し、その形成史を再考した。そして、四川省の「倒話」や甘粛省の「白龍江流域方言」のような、チベット語との強い接触を経た漢語変種のみが来している上記4の言語変容が甘溝方言にも見られることを指摘し、当該方言の変容過程にはチベット語からの影響も考慮すべきであるという考えを提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
家庭の事情により春期の実地調査を見送ったため、データの収集状況が計画段階よりもやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に引き続き、長期休暇中に実地調査を行い、その他の期間はデータの整理・分析に当てる。上述した遅れについては、2019年度の夏期調査の日程を計画よりも2週間程度長く確保することによって対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
家庭の事情により、従来計画していた春期休暇中の実地調査を見送ったため、次年度使用額が生じた。2019年度の夏期調査を計画段階よりも2週間程度長く行うよう変更し、その関連費用として使用する。
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