本研究の目的は,1.会話における参与者の行為と,会話の場において変動する参与者同士の関係(局所的関係)との関連を明らかにすること,2.局所的な関係と長期的な関係性(大域的関係)との関連を明らかにすること,の2点である.これまで社会言語学や社会心理学などにおいて,社会的地位や年齢などといった人口学的変数や,公的な関係による役割関係などに基づく比較的安定した関係が参与者の行為にどう影響するかについての知見は多く蓄積されてきた.しかしながら,会話を理解する上では,その時々の行為によって変動する局所的な関係も視野に入れる必要がある.そのため本研究においては,これまで十分に検討されてこなかった行為と局所的関係の関連と局所的関係と大域的関係との関連を,実際の会話データに基づいて経験的・実証的に明らかにした.
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