研究課題/領域番号 |
17K13458
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
ホワン ヒョンギョン 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (80704858)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 幼児言語 / 韓国語 / 日本語 / 子音発達 / 破擦音 |
研究実績の概要 |
本研究では日本語と韓国語において、幼児の音素獲得の過程を音響音声学的知見とともに心理言語学的実験によって明らかにする。また、日本語と韓国語の対照を行い、音韻体系が異なる言語間にどのような違いが存在するかを一般言語学な観点から考察することを目標としている。 今年度は、日本語と韓国語における幼児の発話で現れる音響的な特徴を明らかにするため、3歳~6歳の幼児の録音を実施した。対象単語は各言語の幼児語の中で対象子音が語頭に現れる名詞を選択した。日本では予備実験8名を含む68名をデータが得られ、音響分析をしている。 韓国語においては、ソウル方言と慶尚南道の方言で子音の特徴に差があることが先行研究で指摘されているため、両方の方言を調査した。具体的にソウル方言の破裂音に関しては、lenisとaspirated カテゴリの分別がVOTではなく後続母音のピッチになりつつあるということが広く報告されているが、ピッチアクセント言語である慶尚方言に関してはそのような変化が無いと言われている。ソウル方言に関しては韓国中央大学で乳幼児の言語発達を研究しているChoi・Youngon氏に協力を了承し、韓国語における幼児の録音を実施した。ソウル方言では、2歳~6歳の幼児44名のデータがえられた。慶尚方言に関しては、3歳~6歳の幼児19名を録音して、さらに調査を勧めている。 さらに、韓国中央大学で、韓国語の破擦音における乳児の知覚実験をHabituation - Dishabituation paradigmを利用し調査している。今年度は46名のデータを得て分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
韓国語における対乳児発話コーパスの構築の前に、幼児の発話を調べる必要があったため、2018年度は韓国語および日本語において幼児の音声録音を実施した。計画した以上のデータが得られたので順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に得られた音声データは、破裂音だけではなく先行研究が非常に少ない摩擦音や破擦音も含まれているので幼児の子音獲得全体を調べることができる。データの量、また成人発話と異なる難しさがあり、分析にはかなり時間がかかることが予想されるため、今年度は2018年度に得られたデータの音響分析を行い日本語と韓国語における幼児発話の比較を行う。 また、韓国語の慶尚南道方言に関しては、まだ幼児19名のデータしかなく、日本語およびソウル方言との比較のため、追加の録音を行う予定である。 並行的に、Habituation-Dishabituation paradigmを用いて得られた、韓国語の破擦音における乳児の知覚データの分析を進める。韓国語の破擦音は破裂音と同じようにlenis-aspirated-fortisの3つのカテゴリがあり、かなり珍しいシステムであるが先行研究は多くない。幼児の発話とともに乳児がいつ頃どのペアから知覚できるようになるのかが分かると、同じ方法をつかってすでに明らかになっている破裂音の知覚データと比較することができ、乳児の言語発達に音響的特徴がどういう影響を及ぼすかが分かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
韓国でのデータ収集が順調に行われ、韓国出張が計画より短くできたため次年度使用額が生じた。 当該助成金は成果発表に使用する予定である。
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