研究課題/領域番号 |
17K13458
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
ホワン ヒョンギョン 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80704858)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | acquisition / plosives / affricates / Korean / Japanese |
研究実績の概要 |
本研究では日本語と韓国語において、幼児の音素獲得の過程を音響音声学的知見とともに心理言語学的実験によって明らかにする。また、日本語と韓国語の対照を行い、音韻体系が異なる言語間にどのような違いが存在するかを一般言語学な観点から考察することを目標としている。 2020年度は韓国語の破擦音において、乳児の知覚データの分析結果をまとめ、国際学会The International Congress of Infant Studies 2020で発表した(Perception of Korean affricate contrast by native infants)。実験は韓国中央大学で、韓国語の破擦音における乳児の知覚実験をHabituation - Dishabituation paradigmを利用し行なった。韓国語の破擦音は破裂音と同じようにlenis-aspirated-fortisの3つのカテゴリがあり、かなり珍しいシステムであるが先行研究は多くない。幼児の発話とともに乳児がいつ頃どのペアから知覚できるようになるのかが分かると破裂音・摩擦音の発達と比較することも可能になる。4-6ヶ月(24名)と 7-9ヶ月(21名)の乳児が韓国語の破裂音 /c*a/-/cha/を区別できるかHabituation-Dishabituation paradigmを用いて調べた結果7-9ヶ月の乳児だけが弁別できるということが分かった。 同じ方法をつかってすでに明らかになっている破裂音の知覚データと比較すると多少遅れていることが明らかになった。 また、比較のため韓国語を母語とする成人の知覚テストを追加で行った。韓国語の破裂音の弁別テストには24名の結果が得られた。テストの結果、弁別率は93.3%で破裂音に比べ低いことがわかった。 幼児の発話データの音響分析のためアノテーションを行った。日本語は3歳児7名、韓国語の慶尚南道方言は4歳児8名のアノテーションを完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響で韓国での調査ができなくなり、協力者である韓国中央大学での実験も被験者の参加が難しかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、韓国語の標準語であるソウル方言の幼児発話の分析を行う予定である。韓国中央大学の協力でソウル方言の幼児発話の録音は終了したため音響分析を2021年度に終わらせる必要がある。また、慶尚南道の方言で子音の特徴に差があることが先行研究で指摘されているため、慶尚南道方言の結果と比較する予定である。さらに、分析後日本語と韓国語における幼児発話の比較も続けて行う。 並行的に、韓国語の慶尚南道方言に関しては、まだ幼児19名のデータしかなく、日本語およびソウル方言との比較のため、追加の録音を行う予定である。2020年度に追加の録音を行う予定であったが、コロナの影響もあり調査が難しかったので、可能な状況になれば2021年度に続けて行う予定である。 さらに、産出研究の結果をもとに知覚研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で国際学会への参加、海外での調査を行うことができなかったため、未使用額が生じた。2021年度は国際学会での発表、韓国での調査の経費に未使用額を充てることとしたい。
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