研究課題/領域番号 |
17K13469
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鴻野 知暁 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (30751515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語史 / 係り結び / コーパス / アノテーション |
研究実績の概要 |
本研究課題は、国立国語研究所の「日本語歴史コーパス」に対して係り結びの情報をアノテーションし、その情報を形態論情報と組み合わせて上代から中世期における通時的な分析を行うものである。 昨年度から、助動詞ナリと係り結びとの関係に着目して研究を進めている。古代日本語において、終止形に接続するナリ(終止ナリ)と連体形に接続するナリ(連体ナリ)とが構文的に異なるふるまいを示すことが先行研究で指摘されてきた。たとえば、終止ナリは係助詞ゾ・ナム・ヤ・カ・コソの結びになり、活用が変化するが、連体ナリはこれらの係助詞の結びにならないことが知られている。しかし、ナラム・ナルラムのような連体ナリの複合形式についてこのことが当てはまらないことが昨年度の研究によって明らかになった。昨年度では、国立国語研究所の「日本語歴史コーパス」に含まれる作品の中で、平安時代編の6作品と鎌倉時代編の3作品を対象として調査を行ったが、本年度は平安時代編全作品(16作品)、鎌倉時代編全作品(10作品)、さらに和歌集編全作品(8作品)に範囲を広げた上、活用語に承接する助動詞ナリについて調査した。これらを範囲として、助動詞ナリに関わる形態論情報に、本課題で作成済みの係り結びのアノテーション情報を組み合わせた新たなデータベースを作成した。 助動詞ナリと係り結びに関する口頭発表を行い、以下のことを明らかにした。(1)1100年頃までには、連体ナリ(助動詞と複合しない単独用法)が係助詞の結びになっている確例は無く、また、疑問詞の結びともならない。(2)連体ナリが助動詞と複合すると、係助詞「ゾ・ナム・ヤ・カ・コソ」の結びになるし、疑問詞の結びにもなる。(3)「疑問詞+の・が(主格)~ならむ・なるらむ」の構文で、「疑問詞+の・が(主格) 」は、ナリの前の準体句の中におさまっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平安時代~鎌倉時代の幅広い資料について調査を進め、助動詞ナリと係り結びに関する構文現象についてシンポジウムで口頭発表するに至った。また、助動詞ナリに関わる形態論情報に、係り結びのアノテーション情報を組み合わせた新たなデータベースを作成した。
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今後の研究の推進方策 |
影印本や索引類を参照し、異文についても考慮した上で分析を進めていく。また、データ公開のためにユーザーインターフェイスを整備する。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって行動が制限されることも想定されるが、Zoomなどを使用したオンライン会議を開き、国立国語研究所の研究員から意見を求めた上で作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
作業計画に変更が生じ、データ公開のための作業従事者への謝金に充てることができなかった。研究に必要な消耗品(書籍類)について次年度に購入する。
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