本研究課題は、国立国語研究所の「日本語歴史コーパス」に対して係り結びの情報を付与し、その情報を形態論情報と組み合わせて上代から中世期における通時的な分析を行うものである。奈良時代『万葉集』、平安時代6作品(『竹取物語』・『古今和歌集』・『土佐日記』・『枕草子』・『源氏物語』・『大鏡』)、鎌倉時代3作品(『今昔物語集』・『宇治拾遺物語』・『とはずがたり』)のコーパスデータの長単位データを出力し、係り結びの情報を手作業で付与し、データベースを作成した。本研究で付与された係り結び情報は、遠く離れた位置の呼応関係をとらえることができ、従来の「日本語歴史コーパス」では検索不可能だった情報を提供する。また、係り結び情報は、国立国語研究所による形態論情報と組み合わせて参照することができ、広範な資料に対して計量的な分析が可能となった。 これまでに、上記データベースを利用して、以下の研究を行った。1)上代で逆接句として働くコソの係り結びの修辞性。2)「形容詞+モ」に関わる構文とその機能。3)疑問詞疑問文におけるカとゾの出現位置。4)逆接句の意味分類とコソによる係り結びの関係。5)助動詞ナリが他の助動詞と複合したときに係助詞の結びになるかについて。 また、今年度は最終年度に当たるため、作成したデータのうち、『古今和歌集』・『大鏡』・『とはずがたり』の3作品について、情報に誤りがないか確認した。著作権の侵害とならないよう十分注意し、researchmap上にてこれら3作品の係り結びに関するデータを公開した。
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