本研究の目的は、主語位置に生起する名詞句に焦点を当て、抜き出しができる事例を提示し、そのような事例をラベル理論の観点から説明することにある。また、その説明を通し、動名詞節の構造の解明に寄与することも併せて目的に挙げられる。 従来の研究では、主語位置に生起する名詞句内部から抜き出しをすることが一律不可能であると仮定されることが一般的であった。しかし、本研究では、φ素性と完全に一致関係にある主語の内部からは抜き出しができないことを示した。この主張の適切さは、主語位置に生起する動名詞節や不定詞節などの様々な節や、there構文などから示される。これらは、英語に焦点を当てられているが、この考えは通言語学的にも適切であることを、日本語、スペイン語を通して示された。 また、最終年度における研究として、上述の考えを、目的語にも拡張できることを示した。適用できる構文として、小節、結果構文、二重目的語構文などが挙げられる。これらの構文で抜き出しができる事例は、φ素性の点で完全に一致しているのではなく、部分的に荷も一致関係に入っていると考え、これらの事例を適切に説明することができる。この新しい考えを部分的ラベル付け(partial labeling)呼び、新しいバベル付の可能性を提示した。 これらの研究成果は、「長距離素性継承を用いたラベル付けと名詞句内部からの抜き出し」(日本英語学会第36回大会)で発表され、"Labeling with Long Distance Feature Inheritance and Extraction out of Noun Phrases"として出版されている(JELS 37)。さらに、部分的ラベル月に関しては、English Linguisticsに掲載されている("Shared Labels and Partial Labeling")。
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