研究課題/領域番号 |
17K13474
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
坂本 暁彦 常磐大学, 総合政策学部, 助教 (50757193)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 純粋疑問文 / 修辞疑問文 / 指示的・非指示的解釈 / 非難の焦点 / 統語・韻律構造 / 内的・外的検証 / 音声聴取実験 / 質と量 |
研究実績の概要 |
生成統語論ではこれまで、様々な言語における諸現象の観察を通して、言語の形式的側面に関する一般化・理論構築が繰り返し行われてきた。この過程で、可能な統語構造の存在がかなりの程度明らかとなった。統語構造がいったん明示化されると、言語が実際に機能する際に、当該統語構造から派生される表示が言語の使用や理解にどう関与するのかについて研究することが可能となる。こうした言語運用にまつわる側面の説明も射程に入れた、より一般性の高い言語理論の提示を試みる研究は、生成文法の枠組みにおいてそれほど活発には行われていない。本研究は、生成統語論がこれまでに築き上げてきた形式的な基盤を下地として据え、統語構造に関する諸原理が実際の言語使用においてどのように機能するのかについて調査し、より一般的な言語理論の構築を試みるものである。 平成29年度は、研究実施計画に基づき、文レベルの言語現象(①日本語修辞疑問、②英語寄生空所、③日本語不変化詞残留・英語非制限関係節化)に関するデータの収集・整理・分析を試みた。未発表のものもあるが、学会発表や論文掲載という形でその成果を示してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した①~③における文レベルの言語現象については、データの収集・整理・分析を並行的に進めているが、③で示した日英語対照研究が遅れ気味である。しかし、②に関して、英語母語話者への聞き取り調査を何度か行っており、基礎研究として位置付けた純粋疑問文の日英語対照研究についてはシンポジウムでの発表や論文掲載という形で成果を出している。当該現象そのものに対する調査結果に関しては論文投稿の準備をしている段階である。さらに、①については、当初の計画にはなかった心理学を専門とする研究者との共同研究も実施し、心理実験による量的な言語分析も行っている。研究成果については、異分野融合を推進する学会で口頭発表を行い、その内容をプロシーディングスにしている。個人研究でも①に関する研究成果を、対応する英語の現象とも比較しながら論文という形で残している。そのため、①に関しては、当初の計画以上に研究が進んでいる。これらを総合すると、大方順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、語レベルの言語現象(日英語属格複合および英語動詞不変化詞結合)に関するデータの収集・整理・分析が計画されている。これについては、研究協力者との共同研究を中心に調査を進め、得られた成果を学会で発表するとともに、論文にその内容をまとめる予定である。しかしながら、文レベルの言語現象①~③に関する研究の進捗状況も考慮に入れ、柔軟に研究を推進するようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、論文執筆という形で研究成果を残すことが多かったため、研究協力者の旅費として計上していた分が支出されずに次年度使用額が生じることになった。今年度研究を進める過程で当初の計画にはなかった新たな研究の方向性が見え始め、計画書には記載のない研究者との共同研究を行う必要性が生まれてきた。そのため、次年度使用額については、当該研究者との共同研究で必要となる旅費や人件費・謝礼として使用する予定である。また、平成30年度分として請求した助成金については、計画書に記載した通りに支出する予定である。
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