研究実績の概要 |
本年度は英語の中間構文の歴史的発達に関して、状態変化動詞break, cut, open, 非状態変化動詞readを歴史コーパスを用いて調査・分析を行った。潜在的動作主が必ずしも含意されないbreak, openは古英語から見られるが、道具の使用を伴い潜在的な動作主が含意されやすいcutと表層主語がイベントの主語とは解釈されない、すなわち必然的に潜在的動作主を含意するreadは近代英語になって初めて観察された。 昨年度までのbreakを中心とした研究で明らかにしたように、後期古英語から中英語にかけて、状態変化動詞の能格構文が法助動詞と共起するようになったことから、能格構文から叙述構造を含む中間構文が派生し、様態副詞を含む中間構文で潜在的動作主の含意が促進され、PROを含む中間構文が生じた。 叙述構造を伴う中間構文の構造にはDikken(2006)のRP構造を採用し、PROを含む構造はLarson (1988)およびStorik (1992)に基づき、項降格の原理によってvPに付加すると仮定した。 また、能格構文に法助動詞が現れ始めた時期と叙述を表す機能主要部が生じた時期が後期中英語(Tanaka and Yokogoshi (2010))で一致することから、中間構文の成立は後期中英語であると結論付けた。 これにより、中間構文の成立時期、中間構文の意味的・統語的特徴をかなりの程度明らかにすることができたと思われる。
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