現代英語における中間構文の統語的意味的特徴、すなわち法助動詞あるいは難易副詞との義務的共起、表層主語の特性・属性の叙述的解釈、潜在的動作主の含意は、中英語に能格構文からの再分析によって叙述を表す機能範疇Rの導入と様態副詞の動作主指向性の獲得によって生じたと仮定した。具体的には、中間構文に法助動詞が現れる場合、可能性を表す音形を持たない形容詞POSSIBLEがRP補部に生じ、Tに基底生成される法助動詞によって認可される。難易副詞が現れる場合、音形を持つ形容詞がRP補部に生じ、R主要部にある-ly接辞と併合され副詞として具現される。そして、RP指定部にあるvPからVの補部DPが主節のTP指定部に移動することにより、主語の特性・属性の叙述的解釈が生じる。また、様態副詞の動作主指向的解釈の獲得により、恣意的PROがvPに付加するようになったことで潜在的動作主の含意が生じる。これらの変化の結果、能格構文には現れないcutやreadタイプの動詞が中間構文に現れるようになる。すなわち、cutは状態変化を含意するが、道具を使用する動作主が含意されるため、潜在的動作主を含まない能格構文には表れず、中間構文にのみ現れる。readは状態変化を含意せず能格構文の表す自発的状態変化を表さないため、能格構文には現れず、潜在的動作主を含意し、主語の特性・属性を叙述する中間構文にのみ現れる。この英語史における中間構文の発達は、時期、統語派生、意味の点で、tough構文や疑似受動文と密接に関連があると予測されるため、中間構文の発達のさらなる経験的理論的裏付けを行うと同時に、関連構文の研究につなげていくことが期待される。
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