研究課題/領域番号 |
17K13481
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
瀬尾 匡輝 茨城大学, 全学教育機構, 講師 (20761026)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 商品化 / 消費 / 教師・学習者の意識 |
研究実績の概要 |
平成29年度は以下の2点を明らかにすることができた。 1)言語教育及び他領域(経済学、社会学、教育学)における商品化と消費の先行研究を概観し、その議論を整理した。結果、多くの研究では、学習が市場原理に委ねられ商品として提供されることが否定的に捉えられていることがわかった。また、商品化が行われている事実や過程は浮き彫りにはなっているものの、その過程にいる教師や学習者の意識は十分に明らかになっていなかった。 2)香港の社会人教育機関6校で調査を行った。調査では、教師28名・学習者35名にインタビューを実施し、商品化と消費に対してかれらがどのような意識を持っているのかを探った。29年度は教師から得られたデータを分析した。教師の多くは、言語教育の商品化を肯定的に捉えていた。かれらは学習者の興味や関心に合わせて授業を行うために自らの実践を改善し、それを日本語教師としてのやりがいと感じていた。そして、学習者の要望を反映させつつ、自身の知識やスキルを活かした授業を教師自らが企画し、学校に提案することで担当授業数を増やし、自らの雇用を守ろうとしている者もいた。だが、学校側が学習者を確保するために進級テストを簡単にしたり、テストに合格しなくとも学習者を進級させたりすることもあり、教育効果の観点から言語教育の商品化に疑問を持つ者も複数いた。そして、学校側に改善するよう伝えても受け入れてもらえず、教育に対する意欲を失う者もいた。 今後は学習者の分析を深めるとともに、教育機関間及び調査協力者の世代間の比較を行い、どのような違いがあるのかを明らかにする。また、ベトナムでも同様の調査を行う。香港では余暇活動として日本語を学ぶ者が多いのに対して、ベトナムでは日系企業への就職や昇給・昇進のために日本語を学ぶ者が多いと言われている。これら2 つの異なる消費行動に対して、どのような意識の違いがあるのかを探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
香港で多くのデータを収集することができたため、分析のための時間が必要となった。そのため、初年度に予定していたベトナムでの調査を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、主に以下に取り組む。 1.昨年度分析を進めた香港のデータを国内外の学会で発表し、フィードバックを得る。そして得られたフィードバックを参考に論文を執筆し、投稿する。 2.香港のデータの分析をさらに進め、教育機関間及び調査協力者の世代間の比較を行う。 3.ベトナムでの調査を実施する。 4.より多くのデータを収集するため、アンケート調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
支給された額をほぼ全額使用したが、残りの予算では購入できない備品があったため、次年度に繰り越した。30年度は、ベトナムでの調査を遂行するとともに、国際学会での発表を予定しており、そのために予算を使用する。
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