研究課題/領域番号 |
17K13483
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
柳田 直美 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 准教授 (60635291)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 異文化間コミュニケーション / やさしい日本語 / 接触場面 / 言語的調整 / 説明 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、外国人側の評価の観点と「説明」の言語形式やコミュニケーション方略の関連を明らかにし、日本人が外国人に口頭で「説明」を行う際に有効な「説明」の言語形式やコミュニケーション方略の学習を支援するためのツールを開発することである。 2年目である平成30年度は、研究の第二段階として、外国人からの評価が最も高かったnsAの「説明」と最も低かったnsBの「説明」に対する外国人の評価コメントと談話データの関連を詳細に分析した。 分析の結果、まず、「発話量」の観点から差異が見られた。評価コメントからは、nsAに対して「丁寧で詳しい説明に対する満足感」が、nsBに対して「簡潔すぎる説明に対する不満」が語られたが、談話データからはnsAはnsBの倍以上の発話数で説明を行っていたことが明らかになった。よって、nsAが言葉を尽くして説明していたことが高く評価されたと考えられる。次に、「コミュニケーションに対する態度」の観点からも差異が見られた。評価コメントからはnsAは「協力的」「相手の理解確認」が高く評価されたのに対し、nsBは「消極的」「相手の理解確認」が低く評価された。「相手の理解確認」について談話データを分析したところ、nsBの「この中で何かわからない言葉はありますか」「何かわからないことがあれば聞いてください」というような聞き方について、特に積極性・協力的な態度が見られないと低く評価されていた。 このことから、対面での口頭コミュニケーションの場合、「やさしい日本語」が提案してきたような言語的調整という技術的な側面だけでなく、非母語話者の立場に立った調整と非母語話者との会話への積極的な関与が必要であることが示唆された。 また、令和元年度に行う予定であった「説明」の支援ツール開発のためのプログラムを試行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の計画は、研究の第二段階として、窓口対応談話の縦断データを対象として、日本人側の変容分析を行う予定であった。しかし、「研究実績の概要」で述べた通り、「説明」の談話と評価コメントの関連を詳細に分析することが必要と判断してそれらの分析を行った。これらの分析についてはすでに終了し、学会発表を行った。 また、平成31年度に行う予定であった「説明」の支援ツール開発のためのプログラムを試行し、論文として発表した。さらにプログラム参加者から得たフィードバックについても分析し、平成31年度に学会発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、平成30年度に実施予定であった自治体職員の窓口会話における「説明」の実態と意識に関する縦断調査データを用いて、日本人の「説明」の言語形式面やコミュニケーション法力面の変容を分析する。 加えて、平成30年度から実施している「説明」の支援ツール開発のためのプログラムでプログラム参加者から得たフィードバックを分析し、支援ツールおよび支援プログラムの開発・実践に活用する。 さらに、最終年度である令和元年度は、これまでの分析結果を学会発表、論文投稿、およびウェブサイトの形で発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度はアルバイト作業が想定よりも少なかったため、残額が生じた。 令和元年度はウェブサイトの構築費用として平成30年度使用予定分を使用する。
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