本研究の目的は、日本語教育における副詞の効果的な指導法構築を目指し、その基礎的研究として、1)日本語教育における副詞指導に見られる問題点、2)日本語学習者が副詞を学習するにあたり抱えている問題点の2点を明らかにすることである。最終年度である本年度は、1)を中心に、これまで行ってきた調査結果をより精緻化するための調査を行い、その成果を論文にて公開した。 具体的には、日本語教科書における副詞の導入実態について全面的な調査を行った。前年度までの日本語教科書における副詞の導入実態に関する調査では、初級教科書の調査を重点的に行い、中級以降の教科書については、日本語学習者によって産出されやすい、または産出されにくい副詞に限定し、それらが日本語教科書においてどのように扱われているのかを中心とした調査を行っていた。そこで、最終年度である本年度は、これまでの調査結果をより精緻化するべく、全レベル(初級・中級・上級)の日本語教科書を対象に、副詞の導入実態を全面的に調査した。その結果、①初級教科書では、新しい文型に付随した形で、意味・機能的に関連する副詞が、対で、または一つのカテゴリーにまとめられ指導される傾向にあること、②中級教科書では、取り立てて指導される副詞は陳述副詞に集中し、副詞そのものの理解に焦点を当てた指導傾向にあること、③上級教科書では、取り立てて指導される副詞はほぼなくなり、あるとしても、その多くは初級教科書や中級教科書においてすでに導入されている副詞であることが明らかになった。本調査を通して、各々のレベルの教科書における副詞の扱いに見られる特徴だけでなく、日本語教育における副詞指導の一連の流れの一端を示すことができた。
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