研究課題/領域番号 |
17K13486
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
行木 瑛子 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (40781208)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 翻訳 / 日本語教育 / 文化 / 複言語・複文化能力 / 文化を訳す活動 / 初級 / 中級 |
研究実績の概要 |
本研究は、「文化を訳す活動」という新しい形の翻訳活動を大学で日本語を学ぶ初級・中級学習者に実施し、その学習成果を明らかにすることを目的とする実践研究である。平成29年度は、主に(1)日本の大学での実践授業の計画・実施、(2)新規データの収集、(3)収録済みの英国の大学のデータに関する発表・出版を行った。
(1)日本の大学での実践授業の計画・実施:2017年9月~11月にかけて日本の大学で初級・中級学習者計39名に対して、それぞれ1回80分、計5回の「文化を訳す活動」の実践授業を実施した。それに先立ち、準備として海外協力者であるロンドン大学准教授の岩﨑典子氏と実践授業の内容について検討し適宜改善を加えた他、必要となる倫理審査なども行った。またデータ収集の範囲や実践授業前後に行うタスクの内容や形式なども検討した。 (2)データ収集:実践授業実施中に、(a)学習者の授業中のディスカッションの録音データ(約26時間分)、(b)各授業後に学習者が提出する翻訳課題・コメンタリー、学習日記、(c)実践授業の最初と最後に行った翻訳タスク・日本語作文タスクとその録音データ(約60時間分)、(d)実践授業の最初と最後に行ったインタビュー(約20時間分)など、幅広いデータを収集した。 (3)収録済みの英国の大学のデータに関する発表・出版:今回のデータとの比較対象となる、過去に英国の大学で収集したデータについて分析を進め、論文執筆・学会発表を行った。具体的には、Cultural-specific lexis(文化特有の語彙)の翻訳に関するデータ(韓国外国語大学校のVivian Lee氏との共著)と、実践授業前後の翻訳の変化を分析し、論文にまとめたほか、今回の研究の理論的背景でもある機能言語学の授業での応用に関する学会発表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、(1)「文化を訳す活動」に関する実践授業の計画・実施、(2)データの収集を行うことを主な目的としていた。実際に実施していく中で反省点や改善点などが出てきたものの、いずれも概ね予定通りに実施できた。特に、当初予定していた30名を大幅に上回る39名の協力者が実践授業に参加してくれたため、予想を上回る量のデータを収集することができた。また、今回の新規データを分析する上で必要となる、収録済みの英国のデータについても平成29年度中に分析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、主に平成29年度に得た(1)データの整理・分析、そして(2)それに基づく学会発表、論文執筆に充てるものとする。 具体的には、適宜書き起こしなどを行いデータを整理した後、質的データの分析ソフトであるNVivoに取り込み、主題分析などを用いて多角的にデータを分析する予定である。さらに、その結果を国内外の複数の学会で発表し、発表後は査読付きの学術誌にも研究成果を投稿していくことで、応用言語学・日本語教育に携わる研究者・教師に広く発信していく予定である。また、引き続き収録済みの英国のデータについても論文執筆を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会発表の一部を平成30年度に行うことにしたため次年度使用額が生じた。次年度使用額は次年度に支払う旅費の一部として使用する。
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