研究課題
当該研究における今年度の具体的目標のひとつは,データ駆動主義に則った新しい研究方法の提案であった。この目標に対し,まずは文献研究を進め,主にベイズ統計を教育研究における効果測定に応用することの可能性を探った。また,関連する研究方法について学会発表を行なうなどし,更に学会などにおけるワークショップや講演といった形で,データ駆動主義に関する知見を広める活動を行った。次に,特に外国語の語彙を学習するために行われるICT教材のログデータを解析し,それに近似する数理モデルを応用することで,成績の事前予測が可能になるという事例に取り組んだ。具体的には,あるオンライン学習コンテンツへの累積消化率は,いくつかの非線形関数によって適切に近似されることを示し,この非線形関数を利用することで,学習終了時点における累積消化率を予測することができる。これを応用し,大学におけるオンライン科目の単位取得が可能かどうかを予測することが可能であることを示した。最後に,インターネットを利用し,外国語を学習する学生に対し,学習状況を報告してもらうシステムを構築し,個人の学習状況に関する時系列遷移データを得た。高等教育機関における学生の学力は,学生の生活習慣や心理状況,そしてなによりも科目外学習への取り組みの度合いに影響されるとされている。そうした側面を測定することを目的とした心理尺度の開発を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初目標にしていた計画は,着実に遅れなく実施することができている。特に,文献研究や,事例となる実証研究のデータ解析は済んでおり,次年度計画へ進むことができると考えている。ただし,当初予定していたデータ分析プログラムの開発にはやや遅れが見られており,この点を今後の重点としたい。
次年度は,高度なUIを備える,データ解析プログラムを開発し,その運用評価を与えることを主たる目標としている。このデモンストレーションに必要となる部分についての研究は十分に進んでいるが,研究期間内で開発プログラムの質をどれだけ向上できるか,さらにこの運用評価を実際の教育現場において実施できるかが懸念される事項である。
交付申請時に予定していた物品(マークシート読み取り機とマークシート)が,研究上不要なものとなり,購入を見送った。また,参加を予定していた学会への参加が都合により叶わなくなった。これらに予定していた費用は,次年度への物品購入費(解析用コンピュータ)および旅費などに充当する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
広島外国語教育研究
巻: 21 ページ: 169-185
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中国地区英語教育学会研究紀要
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