研究課題/領域番号 |
17K13507
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研究機関 | 共栄大学 |
研究代表者 |
名畑目 真吾 共栄大学, 教育学部, 講師 (60756146)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 英語教育 / リーディング / 読解 / 記憶 / 心理言語学 / 潜在意味解析 / 計算言語学 / 自然言語処理 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,単語や文の意味的な関連が日本人英語学習者のテキスト理解とどのように関わっているのかを明らかにすることである。本課題における意味的な関連とは,言語コーパスと統計分析に基づいて算出・評価される,単語や文が表す概念間の類似度を指す。研究期間1年目である本年度では,本課題の基盤となる実証研究及び教材分析研究を行った。 実証研究では,2文1組の英文を先行研究に基づいて複数作成し,実験材料とした。これらの英文は文間の意味的な関連度の高低が操作されており,潜在意味解析 (latent semantic analysis; LSA) によってその関連度の違いが数値として評価された。実験では,協力者である大学生がこれらの英文をコンピューター上で1文ずつ読解し,読解後には1文目を手掛かりとして2文目の内容を想起する筆記再生課題が行われた。文の読解時間及び再生課題成績を統計的に分析した結果,全体としては高い意味的関連度を持つ英文ほど素早く処理され,読解後の記憶にも残り易い傾向が示された。この結果は,コーパスと統計分析に基づいて評価される文間の意味的な関連度という指標が,日本人英語学習者の少なくとも2文1組のテキスト処理と記憶に影響を及ぼす要因であることを実証するものであり,英文読解における意味的な関連度の影響を今後の研究においても追及する意義を示すものである。 教材分析研究では,英語初学者向けに作成された物語文教材を対象として,文間の意味的な関連度を指標とした分析を行った。その結果,これらの教材の文間の意味的関連度は大人の英語学習者を対象とした教材を分析した先行研究の値よりも高く,学習者の発達段階によって変化する教材の特徴の1つに,文間の意味的関連度が含まれる可能性が示唆された。今後はこの可能性を確証するために,さらに分析対象の幅を広げた検証を行っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請時の通り,本研究の基盤となる2文1組の英文理解を検証する研究を実施し,その成果を論文として発表するまでに至った。さらに,教材分析を中心とした研究も本年度のうちに一部進めることができ,その成果を発表するまでに至ったことは,当初の計画以上に進展している点である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において2文1組の英文の理解における意味的関連の影響を検証したたため,今後は意味的関連が単語単位の処理・記憶や,より長い英文の理解に与える影響を検証する研究を行う。その結果を本年度に得られた研究成果と比較することで,意味的な関連が理解に与える影響がテキストの処理単位によってどのように変化するのかを検討する。これらの研究成果は,国内外の学会や学術誌にて発表することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国際学会での発表が行えなかったため,29年度の研究費に未使用額が生じたが,代わって30年度に国際学会での発表を行う予定である。研究計画自体には変更はなく,当初予定した通りの計画を進めていく。
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