研究課題/領域番号 |
17K13513
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小西 隆之 早稲田大学, 国際学術院, 助手 (90780982)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | L2英語 / 日本人英語学習者 / 韻律 / 評定 / 理解容易度 |
研究実績の概要 |
本研究は第二言語(L2)の韻律(アクセント・リズムなど)が母語話者・非母語話者の理解容易度に大きく影響するという従来研究を受け、日本人英語において、英語母語話者・非母語話者の理解容易度に影響を与える音声特性と、習得段階に伴う変化を明らかにし、日本の英語音声教育における習得段階別の重点指導項目を明確にすることを目的とする。 研究期間初年度には主に音声学者による日本人英語の評定とデータのアノテーションを行った。まず、所属する研究室が所有するL2英語コーパス(英語母語話者25名、日本人英語学習者182名)のThe North Wind and the Sunの読み上げ文の評定を、何れも音声学または関連分野を専門とするa)英語母語話者4名、b)日本語母語話者4名、c)その他の言語の母語話者(スペイン語、ドイツ語、中国語、ポーランド語等)8名に依頼した。評定項目は1)分節音の正確さ、2)韻律の正確さ(リズムや母音挿入など)、3)流暢さ、4)母語訛りの少なさの4項目とした。評定作業は国内外の音声学者に依頼した。 これと並行して、コーパスの音声データに既に付与されていた隠れマルコフモデル(HTK)の強制自動アノテーションの分節音境界の修正を研究補助者3名と共同で行った。2名が一次作業を担当し、研究代表者と所属研究室の音声学とアノテーション作業に精通した大学院生1名がダブルチェックを行った。 また、評定値一致率を分析し、その結果を第31回日本音声学会全国大会と日本英語学会第35回大会で報告した。評定値の相関分析の結果、英語に精通した音声学者であれば、上記の4項目の評定に関して、母語の一致と不一致に関わらずに高い相関(相関係数0.6-0.9程度)が得られることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
評定作業を国内の音声学者に依頼する予定だったが、該当者が相当数集まらず、海外の音声学者にも依頼したため、評定作業が当初の予定通りに進まなかったが、年度内には完了した。自動アノテーションの手修正は、当初は80名分のデータに対して行うことを想定していたが、100名分以上のデータの境界修正が年度内に完了し、2018年度上半期にコーパス内の分析対象としているThe North Wind and the Sunの全てのデータ(182名分)の境界修正作業が完了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はアノテーションを行ったコーパスをオープンソースとして公開すると同時に、本研究課題の核であり、当初は最終年度(2019年度)実施予定だった「日本人英語の理解容易度に影響を与える韻律特性の音響解析」を開始する。また、関連研究として、本研究と同じ音声を用いて、音声学の知識のない一般の日本人英語学習者に主観評定を依頼し、音声学者による各項目の評定値との相関を見ることによって、習熟度の異なる学習者が、それぞれ英語の発音においてどの項目を重視しているかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が所属機関の助成により支出されたことなどから余剰が生じた。
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