研究実績の概要 |
本研究は,英語学習者による音声単語認知におけるトップダウン処理の影響について明らかにすることを目的としている。本研究の基礎となるField(2004)の調査では,複数の語を続けて聞いたとしても,先行する語彙の意味に影響されることはほとんどない(語レベルの聞き取りにおいてはトップダウン処理はほとんど行われていない)という結果であったが,Yamauchi, Yamato, and Kida(2016)の調査では,それが一部支持されない結果となった。本研究は,単語を音声で認知する際のトップダウンが生じる際の要因について,語の選択や順序の影響,英語学習者が持つ特性(e.g., 熟達度,方略使用)という側面から明らかにするものである。 計画として,1年目となる平成29年度は材料となる単語認知課題の作成と予備調査,2年目の平成30年度は300名程度を対象とした本調査を実施する予定であったが,1年目の研究に遅れがあり,平成30年度は小規模のパイロット調査を実施するにとどまった。ごく少数のサンプルを対象に,リスニングテスト,思考発話プロトコル,そして学習者の背景を尋ねる質問紙調査を実施し,英語学習者が英語を聞く際の方略ともいうべき指向性の違いにより,トップダウン,ボトムアップ処理の優位性が異なることが明らかになった。この結果は,これまでトップダウン処理対ボトムアップ処理の優位性が熟達度のみで語られることが多かったのに対し,学習者個人の要因が及ぼす影響について異なる視点からの解明と,今後の指導につながる示唆が得られるものであった。
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