研究実績の概要 |
本研究は,英語学習者による音声単語認知におけるトップダウン処理の影響について明らかにすることを目的としている。本研究の基礎となるField(2004)の調査では,複数の語を続けて聞いたとしても,先行する語彙の意味に影響されることはほとんどない(語レベルの聞き取りにおいては,トップダウン処理はほとんど行われていない)という結果であったが,Yamauchi, Yamato, and Kida(2016)の調査では,それが一部支持されない結果となった。本研究は,単語を音声で認知する際のトップダウンが生じる際の要因について,語の選択や順序の影響,英語学習者が持つ特性(e.g., 熟達度,方略使用)という側面から明らかにするものである。 令和元年度までに,総合的なリスニング課題の結果同程度の熟達度と判断できる2名を対象にケーススタディを実施し,学会にて口頭発表を行った。音声によって提示された英単語の理解を,回顧的思考発話法により抽出し,熟達度が同等の学習者であっても単語の意味理解に至るには異なる方略の使用がみられた。具体的には,背景知識を活用する方略を使用する傾向が強い学習者は,意味の繋がりがある単語群と,繋がりがない単語群を無作為に聞いているにもかかわらず,すべての単語について意味の繋がりを見出そうとしているという特徴があった。 令和3年度は上記の結果を英語論文として投稿し,採択に至った(未刊行)。 また,大規模調査に向けて材料の準備を行った。
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