高専における語彙学習に適したタスクの理論的枠組を探るべく、まずは高専生の語彙学習の実態について研究を行った。研究者の勤務校で行われている語彙学習指導が、高専生の語彙学習にどのような効果をもたらしているのかを問いとして、次のような研究を実施した。 瀬川・山本・岩崎(2017)では、研究者の勤務校における語彙学習を通して、高専生がどの程度語彙を学習しているか探った。瀬川・山本・岩崎・荒木・小澤(2018)では、瀬川・山本・岩崎(2017)での語彙指導を改めて実施し、語彙学習の効果が語彙の長さの違いによりどのように異なるかを探った。また山本・瀬川・岩崎(2019)では、同様の実践による語彙学習の効果が語彙の出現頻度の違いによりどのように現れるのか探った。一連の研究により、研究者の勤務校の高専生については、繰り返し語彙を学習することの効果を探ることができた。しかし、高専生が具体的にどのような学習を行っているか、その学習がどのように語彙の定着に影響したかを明らかにしなければならないという課題が見つかった。その課題を踏まえて、タスクを設定して高専生に語彙を学習させることより、どのようなタスクに語彙学習の効果が現れるのかを探ることを次の研究の目的とした。山本・岩崎・瀬川(2020)では杉浦(2009)のニーズアナリシスを追試した。高専の1年生から3年生と4・5年生では異なるニーズがあること、また杉浦(2009)が調査対象とした高専生とは異なる高専生が対象だったにも関わらず同様のニーズがあることが明らかとなった。 研究ではこの後、高専生のニーズを明らかにする調査の更なる実施を通して、語彙学習のタスクの作成を予定していた。しかし、新型コロナウィルス感染症の拡大により、調査や語彙指導の実践の場が大きく制限されてしまった。
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