研究課題/領域番号 |
17K13518
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤井 数馬 沼津工業高等専門学校, 教養科, 准教授 (50413779)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多読 / 英文読解速度 / 語彙サイズ |
研究実績の概要 |
本研究期間の1年目にあたる平成29年度は、授業内で定期的に英語多読を実施することによる、学習者の英文読解速度への影響について調査、分析を行った。 先行調査では、高等専門学校2年生118名を対象に、週に1回、30分程度の授業内多読を半期間(14回程度)行い、その間に同程度の難易度と語彙レベルであることを確認した英文3種類を用いて3回速読調査を行い、それぞれWPMと、意味理解を伴った修正WPMの値を調査した。その結果、WPMにおいて、1回目の調査と比較し、2回目および3回目の調査で有意に上昇し、修正WPMにおいて、1回目および2回目の調査と比較し、3回目の調査で有意に上昇していたことが分かった。さらに、参加者を英語習熟度、および期間内読語数に応じて3群に分けて分析した結果、英語習熟度が高い学習者は元々英文読解速度が速いだけでなく、多読指導によって速読力が大きく上昇すること、期間内に多くの英語を読む学習者ほど、速読力の上昇が大きく、特に意味理解を伴った速読力の養成に貢献する可能性が示唆された。 しかし、この研究には対照群がなかったため、異なる高等専門学校2年生123名(1年次受験TOEIC Bridgeのスコアにおいて、先行研究の参加者と有意差なし)を対照群として、授業内多読を行わない前期半期間に先行研究と全く同じ調査を同じ回数行い、先行研究の参加者を実験群とすることで、多読による速読力の変化への影響を研究することにした。この調査の結果を先行研究と比較したところ、WPMおよび修正WPMの変遷において、1回目、2回目の調査では両群間に有意差はなかったが、3回目の調査では実験群が有意に統制群を上回ったことが分かった。 この2年間の結果から、授業内多読を半年間行うことで、行わない場合と比べ、速読力は有意に高まること、その傾向は多読を開始して5カ月頃から現れ始めることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目では、当初の計画通り、英語多読を行うことによる英文読解速度に与える影響を調査し、対照群の結果と比較することで、より精緻な分析が可能になった。さらに、参加者に質問紙調査を行ったことで、WPMおよび修正WPMが大きく上昇した学習者たちに共通して見られる英語の読み方の質や選書の仕方の考察も可能になった。 質問紙調査の結果、WPMを大きく上昇させた上昇群は、多読が英作文力向上やリスニング向上に繋がると回答した割合が、他の群と比較して有意に高かった。さらに、英文内で出会った単語や表現を使おうと思って読んでいる割合や、多読がスピーキング力向上の寄与に繋がると回答した学習者の割合も10%水準で高いものだった。上昇群の学習者からは、多読の効果を感じ、自信を持って読み進めることで、速読力を向上させている姿が浮かび上がった。一方で、多読図書の選書の仕方とWPM変化の違いの間に注目すべき相関関係は見られなかった。 以上のように、本研究1年目の調査は計画通りに進み、2年目ではこの研究成果を公表していくとともに、次の研究課題に取り組みたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目では、定期的な授業内での英語多読を行うことによって、学習者の語彙サイズにどのような影響を与えるかに関して調査を行う。具体的には、調査期間の最初と最後に語彙サイズテストを行い、調査期間に授業内多読を定期的に実施していく。また、英語の読み方の質、選書の仕方、英語多読の効果認識等に関する質問紙調査も行い、語彙サイズの変化と学習者の選書や読み方の質の間で関連性が見られるかについて調査する。 また、研究1年目の成果を、学会での口頭発表および論文発表というかたちで公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度においては、平成30年度より勤務地が変わることが決まり、新しい研究環境になってから適切な機器の購入をしたいと考えたため、当初購入予定であったパソコンの購入をしなかった。平成30年度以降は、本研究による成果を公表していくことが大きな任務の一つとなるため、平成30年度に機器の購入を行い、研究遂行のための環境を整えたい。また、学会や研究会に積極的に参加し、本研究の成果を公表していきたい。
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