研究課題/領域番号 |
17K13521
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
熊倉 和歌子 早稲田大学, イスラーム地域研究機構, 研究助手 (80613570)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境史 / エジプト中世史 / 疫病史 / 社会経済史 / 西アジア・イスラーム史 / 地中海世界 |
研究実績の概要 |
本研究は、中世の温暖期から小氷河期への移行期にあたる13世紀後半から16世紀半ばまでの中東・北アフリカ地域(アラブ圏)を対象として、疫病の流行と気候変動、社会経済の動向の相関関係とパターンを明らかにし、他地域と比較しながら、人間がおかれていた環境、および環境の変化が人間に与えた影響、そしてそれに対する人間のリアクションを追究し、同地域の固有性や他地域との共通点を探ることを目指す。 初年度は、資料収集と史料の読み込み、またそこから得られるデータの入力を行った。資料収集に関しては「現在までの進捗状況」で述べる理由により、実質的な進展を得ることができなかったが、既得史料の読み込みについては、予想以上に得られるものがあった。具体的には、本研究はこれまで「ペスト」として総称されてきた疫病を動物への被害の有無や症状に準じて細かく分類し、時系列的に整理を行うことや、気候変動と社会経済の動向、疫病発生の相関関係を調査することを目標に掲げているが、このような視点で既得史料である年代記等を読み込むと、かなりの量の情報を得ることができることがわかった。そのような中で、今年度は気候変動と社会経済の動向に関する情報を中心に追った。 成果として、3月にイタリアで開催された国際ワークショップにおいて“The Shift from Medieval to Modern in the Natural Environment of Egypt“と題する報告を行った。また、黒死病後の地方の状況を論じた“A Research Note for the Topography of Medieval Buheira”を『上智アジア学』から発表した。これらの成果をまとめたものを、次年度以降にケンブリッジ大学出版から出版される予定の論集に寄稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、エジプト国立図書館やエジプト国立文書館での史料調査を研究計画にあげていた。前者については特に問題なく調査できたものの、後者については保持していた利用者カードを発行年が古いという理由で無効とされ、入館できなくなってしまった。再発行のために、5月に同館に赴いて手続きを行ったが、9月に調査に出た時点では再発行されておらず、結局新たなカードを受け取ることができたのは3月の調査時であった。このため、同館で予定していた作業はまったく進まなかった。しかし、3月の調査時には、新たな史料を発見することができたので、来年度以降の現地調査時に閲覧と解読を進めていきたいと考えている。 他方、新たな史料に着手できなかった代わりに、既得史料の読み直しなどに重点を置いて研究を進めたが、この点に関しては予想以上にデータ量が多いことがわかったため、当初の予定より遅れてはいるが、内容的には概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
個人的なことではあるが、2018年度前半に出産を控えているため、出産後しばらくは海外渡航が難しいことが予想される。しかし、そのような期間はかえって既得史料にあたるいい機会であると考え、2年度目は既得史料の読み直しを推進していく考えである。
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