研究課題/領域番号 |
17K13522
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研究機関 | 上武大学 |
研究代表者 |
牧田 義也 上武大学, ビジネス情報学部, 講師 (90727778)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アメリカ史 / グローバルヒストリー / 国際赤十字運動 / アジア太平洋史 |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀前半のアジア太平洋地域における保健衛生制度の形成過程に対して、日本とアメリカ合衆国の人道支援事業が及ぼした影響を、日米両国の赤十 字社の活動に焦点を当てて考察することを目的とする。この目的を達成するために、令和3年度は第一に、ハワイにおける日米赤十字社の人道支援事業を20世紀転換期まで遡って検証した。本研究は、米西戦争から第一次世界大戦を経て、一九二〇年代に至る黎明期のハワイ赤十字事業を分析対象とし、同地における赤十字人道主義の理念と実践が、国民・国家間の水平的な連帯を促進する国際的装置から、植民地的状況下で階層化された多様な集団を、垂直的に統合する地域的装置へと変化したことを明らかにした。令和3年度は第二に、フィリピンにおける赤十字事業の展開を1920年代を中心に考察した。本研究は,帝国支配と国民形成をめぐる米国史・フィリピン史の研究動向を踏まえた上で,フィリピン群島における赤十字人道支援事業について分析した。アメリカ赤十字社フィリピン支部は,1920 年代に独立運動が高揚し,フィリピン人エリート層主導の国民形成が進み,帝国支配の階層秩序が動揺しだす只中で成長を遂げた。植民地赤十字事業は,いわば広域的な帝国支配の論理と地域的な国民形成の論理との社会的な均衡が揺らぐ過程で発展したのである。本研究は,この発展を支えた超域的な人道主義の論理 に照準を合わせて,米赤フィリピン支部の活動を,国際赤十字運動の世界 的展開の中に位置づけて考察した。以上のように、1898年の米西戦争に前後してアメリカ合衆国に併合されて準州となったハワイと、同じくアメリカ合衆国の支配下に入りながら植民地にとどまったフィリピンという、条件が異なる二つの事例を分析することで、本研究はアジア太平洋地域における赤十字人道支援事業が各地の状況に応じて変容していく様相を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、当初予定していた国内外の各地での文書館調査等を中断・断念せざるをえない状況が発生した。そのため、令和3年度は収集済み資料の分析と論文執筆に重点をおき、その一部を研究論文として公開した。令和3年度の研究状況を振り返ったとき、海外史料調査を実施できなかったことは、研究の進捗に対してマイナスに作用した。しかし、その一方で収集済みの史料を改めて再検討し、時間をかけて分析し直すことで、当初は予期しなかった研究の成果を挙げ、2本の論文にまとめることができた。以上を総合的に勘案したとき、令和3年度の研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
国内外の新型コロナウイルスの感染状況を見極め、可能であれば資料収集を実施できるよう、準備を進めておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、当初予定していた国内外の公文書館等での資料調査を実施することができなかったため。
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